ビジネス書は絶好のマーケティングツール
著者の水野俊哉さんは、ビジネス書作家として活動する一方、出版プロデュースやコンサルティングを手がける。以前はベンチャー企業の経営者。上場寸前まで成長を遂げたが急激な業績悪化で、3億円の負債を抱える身となり「地獄のような日々」を過ごした経験を持つ。
その後、経営コンサルタントとして立て直しを図りながら執筆した本がベストセラーとなり、それを機に本業のコンサルティングの売り上げが飛躍的に向上。事業を伸ばすための有効なマーケティングの一つして、出版が持つ可能性の大きさを知ったという。
出版業界で長らく仕事をしている水野さんだが、その水野さんをして「出版業界はオワコン」という。それは出版業界独特のビジネス慣習のせいで、出版社は売れないとわかっていても、出版点数を維持しなければならない事情があったり、書籍に赤字が出てもそれを補っていた雑誌の売り上げが何年も続けて下落したりしていることが理由だ。出版不況はながらく改善されない構造的なものという。本書で示したのは、その改革案の一つ。
足掛がかりにしたのが、書籍部門だ。書籍のほうは雑誌ほどの減少はなく、一部のジャンルでは前年比で売上増を記録している。特にビジネス書は「ブーム」との指摘があるほど好調。そのビジネス書ブームの背景にあるのが、ベストセラー作りをプロセスに取り込んだ「本の売り方」なのだ。
著者自身も出版がきっかけで「会社の業績を伸ばすことができた」という。その経験で得たものが「本書のキモとなる部分」。現代では、商品やサービスを消費者に知ってもらう手段として、テレビCMなどメディアを使った広告のほか、自社サイトのSEO(検索エンジン最適化)改善や、SNSへの働きかけ強化が考えられる。
「しかし、あなたがそういった施策をしたうえで、事業が伸び悩んでいるのだとしたら、出版がブレイクスルーのきっかけになるかもしれない」と、一読を呼び掛けている。
「ベストセラーの値段 お金を払って出版する経営者たち」
水野俊哉著
秀和システム
税別1500円