深刻化するコロナ禍 「緊急事態宣言」発令、企業はどこまで社会的責任を優先すべきなのか(大関暁夫)

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精神論で飯は食えない!

   しかし世論的には、仮に「要請」であっても、これが経済活動の停滞につながることは必至であり、企業が受けるダメージは避けられず、「国は企業に対して損失補填するべき」「『要請』は『補償』とセットでなければ納得できないし協力できない」といった声が上がっているのも事実です。

   「補償」を伴わない「要請」が、中小・零細企業にとって死活問題であることは疑う余地はないでしょう。そうなってくると、企業はどこまで社会的責任を優先するべきなのか、という問題につきあたるわけなのです。

   機械部品製造C社のT社長は、

「自動車関連業界をメイン売り先としている当社は、売り上げ激減、新規プロジェクト棚上げで大変です。新規営業活動を継続して少しでも売り上げのかさ上げをしなければ、従業員への給与支払いもままなりません。
国の『要請』? うちは大企業と違って従業員を在宅で遊ばせるような余裕はない。何の補償もないまま休業なんてできません。従業員には細心の注意を払いつつ、従来どおりの勤務を指示する」

と話しています。

   「非常時に国の『要請』に優先して応えることは、企業の社会的責任とは思わないか?」との質問にも、

「社会的責任なんて精神論。精神論で飯は食えない。『補償』があるなら『要請』に応える。国がまずそこをしっかりやるべき」

と、一刀両断されてしまいました。

   社長は60代前半。この考え方に近い壮年中小企業経営者は意外に多いのかもしれません。もちろん事業を守る立場からは必ずしも間違っているとは思いませんが、実質的に経済活動が停止に向かうような有事発生時に、自己中心的にないものねだりをしているようにも思えます。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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