サプライチェーンを飛び出して......
近年、QRコードは世界でもインフラ革命の担い手になっていることが、本書では報告されている。2002年には、携帯電話のカメラでQRコードをスキャンすれば目指すウェブサイトにアクセスできるようになった。06年には、空港のチェックインカウンターや自動チェックインで手続きすることなく保安検査場を通過し、航空機に搭乗できるようになっている。
こうした携帯電話やスマートフォンへの応用、航空業界での利用のほか、コンビニチェーンのシステムなど、2000年代に入って、各業種のなかで用途が開発され爆発的に普及していく。
最近では、ホームの安全性を高めるため電車に貼り付けたQRコードを駅ホーム上のカメラで読み取り、ホームドアと車両ドアの開閉を行う仕組みの展開がスタートした。
こうした「暮らしに欠かせない存在」ぶりが報告される一方、世界の「インフラ革命」のシーンで、キーロールを果たしていることも詳述される。中国でお金をやり取りするには、QRコードがなくてはならないものになっており、QRコード決済の普及率は98%に達しているのは、その代表例だ。
搭載情報量や性能のほか、小さい面積で済む省スペース設計、また「デザインの自由度」も魅力となって、QRコードは、引き合いで他に数々あった他のコードを凌駕。2014年には欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞」を日本で初めて受賞したほどだ。
著者の小川進さんは、神戸大学大学院経営学経営科教授で、研究領域は、イノベーション、経営戦略、マーケティング。QRコードを開発してデンソーの技術者らをはじめ、さまざまな関係者への豊富な取材で構成され、読み応えがある。
「QR」という名前は、関係者が長く議論を重ねたすえにも結論が出ず及んだ多数決で決まった。最後まで争った対抗案は「QT」。なぜ「QR」が支持されたかは、本書でご確認を!
「QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ」
小川進著
東洋経済新報社
税別1800円