「幸せ」がGDPで計れない時代 人生のプラスアルファの「何か」が豊かさを決める(小田切尚登)

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「生活が豊かになると出生率が下がる」のは道理

   一つは、労働力の減少である。

   これは現在60代から70代前半くらいのベイビー・ブーマー世代が、核家族志向であったためだ。20世紀後半に、出生率が大きく減ったので、21世紀になって労働力不足が生じ、結果として生産活動が伸び悩むことになった。

   少子化は経済が成熟し、多くの人々が豊かで幸せな生活を送れるようになったために起きた。女性が一生に平均一人強しか子供を産まない、などという事態は人類の歴史上初めてのことである。これは人類が、かつてないほど豊かな生活ができるようになったことの反映である。

   昨今は日欧を追いかける形で東南アジア、インドなどでも子供の数が大きく減っているが、これも「豊かになると出生率が下がる」という理屈どおりの動きである。

   もう一つの要因は産業構造の変化である。

   日本を含めすべての先進国で製造業からサービス業へのシフトが起きた。ひと口にサービス業といっても多種多様だが、医療や福祉、教育、文化、飲食、宿泊、娯楽など、どうしても人手をかけて業務を行わないとならない分野が多い。そのため製造業よりも生産性が劣ってしまうことになる。

   近年はGDPの中でサービス業の占める割合が圧倒的に高くなっており、そのためGDP全体も伸び悩むことになった。

   我々の家にはモノが溢れていて、これ以上モノはもう要らないと感じるようになった。そのため我々の消費はサービスに向かうようになった。住まいやクルマ、電気製品などにカネをかけるよりも、教育や美容・健康、旅行や趣味やスポーツなどにカネを使いたい......という考え方が主流になっている。

   人々が物質的に十分豊かになったために、サービス志向になったということだ。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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