真っ黒なリクルートスーツが苦手だ。
「わたし」がその黒色に塗りつぶされてしまいそうで息苦しくなる。周りの就活生を見渡せば、黒、黒、黒。どこもかしこも真っ黒に埋め尽くされている。
黒色のリクルートスーツが就活生の「制服」になったのは、いったいいつからなのだろう――。
「就活生のスーツ=黒」は「常識」なの?
「就活生のスーツ=黒」という方程式は、現代の就活では、わりと無条件で受け入れられているというか、「え、それが常識だよね?」という同調圧力を感じるというか、とにかくそれに食ってかかろうとしている人にはあまり出会ったことがない。
しかし、あえて私はここで、この「常識」に食ってかかりたい。―― なぜ現代の就活生はそろって真っ黒のスーツに身を包むのだろうか?
その答えは、「周りの就活生がみんな真っ黒なスーツを着ているから、自分も真っ黒なスーツを着る」なのではないだろうか。
正直に言うと、私はその感覚にものすごく違和感を抱く。モヤっとする。
「みんなが着ているから。」
「黒のスーツを着ていなかったら周りから浮いてしまうかもしれないから。」
うん、そうかも。わかる。周りと違うことをするのは、怖い。でも、もっとあなたに似合って、もっとあなたらしさを表現できる服装があるかもしれないのに。みんな揃って「無難だから」という理由で無条件に真っ黒なスーツ。私はどうしても、その「真っ黒」が一人ひとりの個性をのっぺらぼうにしているような気がしてならないのだ。