「地域産品」を起点に考える
著者はこの事態に、地域ブランドの形成が困難に見舞われるのは、ブランディングでまず「地域ブランド」の価値を形成し、それから地域産品に「価値付与」を狙うからではないか、と指摘。順序を入れ替えて、「地産品」を起点として、その「波及効果」によって地域ブランドの価値を高める可能性を探ってみることを提案する。
たとえば、くまモンの高い訴求力でミカンやトマトなどの熊本県の名産品が知られるようになったが、地域ブランドを背景とせず、製品のマーケティングで全国に販路を拡大している地産品もある。
著者の提案は、それらに依存して地域ブランドの確立していく手もあるのではないかというものだ。
そこで問題になるのは「地産品が、地域ブランドの価値を高められるかどうか」だ。それを知るために用いられたのは「仮想的市場評価法」。商品のスペックを被験者に提示して「いくらなら買うか」を聞き、その評価価格と量販店のプライベードブランド(PB)製品などの価格との差が、地産品の「プレミアム度」といえる。
本書で引用されている仮想的市場評価に用いられた地産品は、高知「馬路村農協」のゆずぽん酢、香川・小豆島「井上誠耕園」のオリーブオイル、岩手・釜石「三陸おのや」のサバの味噌煮、北海道・小樽「ルタオ」のチーズケーキ、福岡「茅乃舎」のだしパックの5品目。
このうち、地域産品「馬路村農協のゆずぽん酢」の場合、これを知っている消費者はPBと比べて142%の価格で買うと評価。知らない消費者の同129%の値付けより13ポイント高く、馬路村農協のマーケティング活動により消費者に認知されていることが示された。
他の4品目でも、非認知者の評価より5?15ポイント高く、これら地域産品については「十分に高い波及効果」が確認されたとしている。