限られた原資がボトルネック
ブランディングが大当たりした例が「くまモン」だ。だが、著者によれば、くまモンのヒットは運がよかったことが多分にあり「地域ブランドの価値を高めるための活動として、そのようなブランディング活動は本当に効果的なのか」と疑問を投げかける。
そういわれてみると、確かに第2、第3のくまモンといえるような存在は見当たらない。
自治体などがブランディングにより地域ブランドの確立を目指すのは、地域ブランドが地域産品に「価値付与」をし、地域ブランド産品として高まった評価の「波及効果」で、地域ブランドの効果がいっそう高められる「双方向の影響関係」が想定されているからだ。
たとえば、地域ブランドの「伊勢」の価値が、消費者に認められているおかげで、地産品である「赤福」にも価値が付与される。地産品の「厚岸の牡蠣」に対する評価が高まれば、地域ブランドであり「北海道」や「北海道の海の幸」の価値がいっそう向上する。こうした関係が目標にされている。
だが、伊勢や北海道はもともと地域ブランドをつくる素材に事欠かない土地柄で、そうした素材を持たない場所では、地域ブランディングの活動では苦戦を強いられるのは当たり前のことだ。
何もないところでブランドを創造しようとすれば、自治体の原資が限られていることがボトルネック。経済産業省が行った調査でも、地域ブランディングがうまく進んでいない「最大要因」として「予算が不十分」な点が指摘されている。
アピールできる素材を持たない場所では、地域ブランドとして認められるような何かを確立する前に資金が底をつき、ブランディングは中途半端なままで動きが止まってしまう。そして「評価が定まっていない地域ブランドは地産品に十分に価値を付与できる見込みがない。地産品にありがたみがなければ地域ブランドへの波及効果もない」ということになる。