「特殊詐欺グループ」は反社会的勢力か?
芸能人が反社会的勢力に利用されることは、暴力団が「反社」の代表的存在だった時代からあった。
「吉本問題は、あらためて芸能人が反社会的勢力に利用されるリスクが高いことと思い知らされたが、もちろん『氷山の一角』に過ぎない。個人事業主として活動するタレントのモラル任せの部分が多いほど、反社会的勢力とのつながりを遮断することは、もはや困難だといえる」
と、本書はいう。
芸人のコンプライアンスの意識が欠けていたことは責められるべきことだが、そのことを招いた吉本興業側のコンプライアンス態勢の脆弱性を合わせて指摘する。
芸人らに参加を求めたのは「特殊詐欺グループ」。果たして、特殊詐欺グループが反社勢力なのか――。このことについても本書では詳しく検討。その結果、暴力団との関係などから「『反社会的勢力』とみなすことについて大きな問題はないのではないかと考える」とする。だが、本質的なリスクは、こうした表面的なことから生じるのはない。
吉本興業がなおコンプライアンスについて態勢の向上を目指し、関係した芸人がいまだ発覚前の状態に戻れないのは、もっと深刻な社会的事情による。
「何より、今回の件を通じて、特殊詐欺グループを反社会的勢力とみなすことに社会が『問題ない』と判断していることが大きい。(中略)反社会的勢力の定義はあいまいな部分も多いとはいえ、現時点での『常識』が判断基準であり、それは社会(時代)の変化とともに変わる(厳しくなる)ものと認識して取り組むことが重要だといえる」
本書のように、反社会的勢力排除について網羅した類書はほかにはないというから、リスクとかかわる「現時点での『常識』」を知ることができる唯一の一冊だ。
「フローチャートでわかる 反社会的勢力排除の『超』実践ガイドブック 改訂版 (ミドルクライシスマネジメント) 」
株式会社エス・ピー・ネットワーク総合研究部著
第一法規
税別2800円