しばらくすると「後付認定リスク」が弾ける
本書によれば、暴力団を「必要悪」とみる風潮は今でも一部にあるという。社会経済の変化や取り締まりの強化などで構成員は変質し「社会全体を搾取の対象とするに至った」のが、今の姿。「社会悪」との認知が大勢になったが、「必要悪」の残像もまだある。
よく知られているように、暴力団の代表的存在だった兵庫県の「山口組」は、六代目体制となってから3つに分裂して弱体化。かつて米財務省に「日本で最も凶暴な暴力団」と評された福岡県の「工藤会」は、福岡県の「頂上作戦」などにより、すっかりなりを潜めているという。全国の他の組織も、活動は鈍くなっている。
「反社勢力をめぐる最近のキーワード」の代表的な一つは「半グレ」だ。暴力団排除のスキを抜けて、企業や社会組織のなかに入り込み活動を行っている。暴力団の構成員と比べれば、反社の様子も半分。アプローチの際は「一般人」然としている。反社会的な雰囲気があっても、「必要悪」の残像が効いて、「関係」が始まることになる。そして、しばらくしてから「後付認定リスク」が弾けることになるのだ。
2019年6月、吉本興業などの芸人らが会社に無断で、反社勢力のイベントに出席し、報酬を得ていたことが発覚。いわゆる「闇営業」だったが、現在までも尾を引く大問題となったのは、参加したイベントが、反社勢力が催したものだったからだ。参加した芸人の中には、金銭的ニーズに迫られたケースもあったとされ、芸人特有のサービス精神も手伝って、リスクなどを考慮せず、その場に赴いた。