40代前後の「就職氷河期世代」に、正社員として働くための道筋をつけようとする動きが加速している。
内閣府の「生活状況に関する調査」(2018年12月7日~24日の実施。2019年3月29日の発表)によると、就職氷河期世代は多くの人が希望どおりの仕事に就けていないという事実が確認されていて、正社員を目指している非正規就労者は多い。その一方、少子高齢化の影響で、この世代の採用に前向きな企業もある。
デキる人材を求めている企業と、希望する仕事に就きたい40代前後のミドル世代をうまくマッチングできれば......。東京都は就職支援事業に取り組む東京しごとセンターの協力を得て、正社員を目指す非正規雇用者を後押ししている。
「一歩」が踏み出せない理由はどこに......
プログラムの特徴は、「Jobトライ ~ミドルインターンシッププログラム~」というインターンシップがあることだ。インターンシップと聞くと、学生が採用活動の前に経験する、就労体験のイメージがあるが、それを覆すような雇用・就職支援プログラムが「Jobトライ」。それが今、東京都で実施されている。
就職や転職を考えているミドル世代の人が、職場での実習を経て、自分に合った就職先を探すことができる。就業後のミスマッチが減らせて、業界未経験からの就職実績も多いという。
このプログラムを使って、因幡電機製作所の営業職に転職を果たした田中雄一さん(仮名)は、求職中に、東京しごとセンターを訪れた際に「Jobトライ」のポスターを見たのがきっかけ。
前職は、クリーニング屋のルート営業で、個人や法人、幼稚園や学校などの顧客を周って、場合によっては新規顧客を開拓したりしていた。そこを辞めてから職業訓練所を経て、1年以上経っていたので、「そろそろ次の仕事を見つけなければ」と焦りを感じ始めていたときだったという。
「それまでに、いくつか求人に応募していましたが、年齢は若いわけでもなく、中途採用で異業種の営業職が希望だったこともあり、苦戦していました」
と明かす。
インターンシップで「得た」もの
Jobトライのプログラムは、導入のカウンセリングを受けた後、3日間のセミナーに参加する。正規雇用で働いてこなかった人向けに、「どのように求職活動をしていけばよいか」「基本のビジネスマナー」などのベーシックな内容がカバーされている。
セミナー終了後、求人リストが配られる。田中さん(仮名)は、その中に因幡電機製作所の技術営業職のポジションを見つけた。「『異業種で営業職』という私の希望とマッチしていたので、『ダメモトで応募してみよう』と応募しました。企業のほうも私に興味を持ってくれて、晴れてインターンシップの段階に進むことができたのです」と話す。
インターンシップ期間中は、不安もなく過ごせたという。「まったくのド素人の私に、社員の皆さんが細かく教えてくれ、工場や現場に同行させてもらいました。3週間のインターンシップが終わり、『この会社で働きたい』と思ったので、企業側からも『入社してほしい、と言われたらいいな』と心の中で願っていました。入社が決まったときには、本当にうれしかったです」と、田中さんは振り返る。
インターンシップは、田中さんにとって、会社やそこで働く人々と話したりコミュニケーションをとることで、その環境に慣れたり、適合するか見極めるための期間だと思っていた。それもあって、「あまり気負わずにインターンシップに臨めたのはよかったですね」。
手厚いサポートで「定着」支援
就職して半年。現在の因幡電機製作所では技術営業職で、法人向けに電気の配電盤を販売している。顧客の要望にそったカスタムメイド製品を作るため、技術的な知識は不可欠。職場環境にはインターンシップ中にある程度慣れていたのだが、覚えることがどんどん増えて、「毎日が勉強です」と言う。
Jobトライについて、田中さん(仮名)は
「きちんと就職活動をして社会人になったわけではなく、いわゆるフリーターから正社員になったという経歴から、民間の転職エージェントのサポートを受けることは難しいと思っていました。民間のエージェントでは、求職者側に求められる人物像も高いですから。そんななか、『Jobトライ』は利用対象者の幅が広く、サポート体制もしっかりしていました。利用者に専任のジョブリーダーがマンツーマンでついてくれる点も魅力で、私の場合も、入社後6か月間、ジョブリーダーが定着支援という形で定期的に会いに来てサポートしてくれました」
対象者がミドル世代の正社員を目指す人ということで、「少しでも就職活動の間口が広がれば、という気持ちで利用を決めた」という田中さん。Jobトライは、「肩肘を張らず、気軽に利用できるサービスだと思います」と話す。
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