アベノミクスを検証しないとまた大盤振る舞いになる
こうした安倍政権の姿勢について、毎日新聞社説「コロナが原因ではすまぬ」は、厳しく糾弾している。
「問題は『回復』を削除するのが遅すぎたことである。景気が感染拡大の前から悪化していたのは明白だ。それなのに政府は不自然な『回復』という表現を続け、感染が広がったとたんに削除した。感染症が全ての原因であるかのごとくみなして、アベノミクスの問題点にほおかむりするようでは困る」
そして、こんな批判で結んでいる。
「早く『回復』を削除していれば、経済の足腰を強めて息の長い成長につながる政策に取り組めたはずだ。それでも安倍首相は問題を総括せず、成長戦略と称して『地方創生』や『女性活躍』などのスローガンを掲げ、成果が乏しいまま看板だけを次々と取り換えた。首相は(コロナ禍の)経済対策で『経済をV字回復させる』と強調しているが、まるで感染拡大前は何も問題はなかったような言い回しだ。アベノミクスを検証しなくては単なる大盤振る舞いになりかねない」
産経新聞「遅すぎた修正判断」は、別の問題点から安倍政権の姿勢を批判する。昨年(2019年)10月の消費増税前の「ごまかし」である。
「日本経済は感染拡大以前から米中貿易摩擦や消費増税の打撃が蓄積し、深刻な不況に陥りつつある。内閣府の景気動向指数は昨年8月から『悪化』に据え置かれ、経済が減速する中で過去2回延期された消費増税が断行された。(コロナ禍の緊急対策で)増税の影響を過小評価したまま弥縫策(びほうさく)を講じても、景気反転の決定打にはならない」
「弥縫策」とは辞書をひくと、「失敗や欠点を補う一時しのぎの対策」「一時のがれにとりつくろって間に合わせるための方策」などとあり、かなり厳しい表現だ。「増税と新型コロナのダブルパンチで個人消費が深刻な落ち込みを見せている」のは安倍政権の姑息な取り繕(つくろ)い策のせいだと非難するのだった。