終身雇用制の終焉、転職の一般化が盛んに言われる現代だが、転職を挟んでのキャリア構築のモデルはまだない。そのため、せっかく絶好の機会があっても、先行きが見通せず、いざとなると恐れをなす「転職希望者」が多いそうだ。
本書「転職の鬼100則」は、自身が6回の転職を経験。生命保険会社で「採用推進を主な仕事」とする著者が、転職をどう考え、どう行動したらいいかを示した一冊。「かつて、ここまで書いたものはなかった」というディープな内容の「転職の参考書」であり、現代に適したキャリア構築の本。
「転職の鬼100則」(早川勝著)明日香出版社
著者は6回もの転職を経験した「強者」
著者の早川勝さんは、外資系の大手生保会社で組織改革、業績回復で腕をふるい、その後はヘッドハンティングで国内の生保会社に移籍するなど「ビジネスの最前線でもまれながら」6回の転職を経験。現在は大手生保会社に勤務しながら、ビジネス系の著作活動を精力的に行っている。
本書「転職の鬼100則」は、早川さんによる「鬼100則」シリーズ第3弾。2年前の「営業の鬼100則」、19年の「リーダーの鬼100則」(いずれも、明日香出版社刊)とも好評で、さらに「鬼からのメッセージ」を望む若者らからの声に応え、三たび「鬼の筆」を執ることになった。
早川さんは、長く生保業界で働いているが、そのキャリアの大半で、営業所長や支社長としてヘッドハンティングやスカウト活動にも従事。そして、自らの転職経験もあり、採用業務では「転職する人たちの『心』に寄り添ってきた」。
「私は『採用の鬼』であると同時に、『転職の鬼』でもある」と早川さん。本書に収めた「100のメッセージ」には、転職に踏み出す勇気がないという「チキンハートな若者」が第一歩踏み出すために背中を押す役割を託し、面接が苦手という人のための「傾向と対策の完全版」としての情報を込めたという。
「転職エージェント」が成り立つワケを考えよ!
「鬼のメッセージ」は、キャリアの考え方、会社の選び方、効果が顕著にあらわれる面接対策、退職対策―など多岐にわたる。
第1章「選択」の中の、転職先選びについての20のメッセージには、
・その職業に社会的な「価値」を見つけ出せ
・「人生の問題」を解決する転職であれ
・見栄を張るな「心が躍っているか」で判断しろ
・選ばれているかどうかで「選べ」
など、目先に惑わされず、本質的なものを見つめることを促す内容が続く。
そして、具体的な選び方として、
・「ファン」になれなければ辞退しろ
・「転職エージェント」に頼るな
・スカウトされたら「業種は問わず」話は聞いておけ
・「副業OK」の転職先を探せ
と、アドバイスを送る。
転職エージェントへの依存は、どんな転職先でもいいから、早く決めてしまいたいという転職希望者には好都合な存在だが、「次の転職を最後にしたい」などという真剣勝負の人にとっては「エージェントの担当者をパートナーとして信じ切るのは危険極まりない」こと。エージェントは手数料ビジネスであり、「当然、手数料の高い企業を紹介したほうが儲かる」仕組みだからだ。
この一例のように、内容は極めて現実的。「転職を考えていない人が読んでも大いにインスパイアされるし、まじめに転職を検討している人にとっては格好の指南書になる」と早川さん。「転職に失敗してしまった」人には「人生をV字回復させる『座右の書』になるに違いない」という。
「転職の鬼100則」
早川勝著
明日香出版社Delver of Secret
税別1600円