バリキャリの彼女に仕事がデキる恋ガタキ 裏テーマは「クズ男」のズタぼろなプライド?(生野あん子)

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クズ男の一発逆転?

   これが男女逆であれば、どうでしょうか――。

   仕事のできる彼氏に、可愛らしい彼女という組み合わせはあまりにありふれていて、おもしろくないですよね。

   やはり、いまだに「男は仕事ができてこそ、カッコいい」という価値観があるからこそ、活躍「しすぎる」彼女に嫉妬する男の物語は、共感を呼ぶのです。

   「知らなくていいコト」の野中は、先輩記者であるケイトを素直に尊敬すればいいのに、学生時代は成績優秀だったプライドのせいか、それができません。さらにはケイトの元カレである尾高の「デキる男」ぶりに、コンプレックスを刺激されているせいか、どんどん暗く、ねじ曲がっていきます。

   野中のプライドは、彼女ばかりでなく、彼女を通して見る「仕事のできる元カレ」にも打ち砕かれているのです。

   男にも女にも嫉妬する野中を、編集長の岩井進(佐々木蔵之介)は「闇に落ちていく」と評し、「少し気持ちがわかる」と理解を示します。

   「仕事のできない野中くん」を通して、バリキャリのケイトや、ケイトを支える元彼(実績も人望もあるカメラマン)、優しくて頼りになる編集長など「デキる人たち」の活躍ぶりが際立つという、ちょっと可哀想な構図でした。

   ひとつ救いがあるとしたら、3月11日に放送された最終回で、野中がなんと「3年後、作家としてデビューした」というオチになっていた点でしょうか。会社員時代、ケイトに「そのドロドロした心中を小説にでもすれば」などと皮肉られていたのを真に受けて? 野中は本当に小説家になってしまったのです。

   しかも、デビュー作のタイトルが「闇落ち」。会社員としてズタぼろになったプライドを「ネタ」にすることで、活路を見出したのでしょう。仕事のコンプレックスを解消するには、「環境を変える」しかないのかもしれません。まあ、中途半端な虚栄心をこじらせるくらいなら、デキる女子とはお付き合いしないほうがいいのでしょう。

   「知らなくていいコト」は全話を通して、週刊誌編集部のウラ側をのぞき見しているようなおもしろさがあり、だんだんと視聴率が上がっていったのがわかる良作だったと思います。(生野あん子)

吉高由里子さんが週刊誌のエース記者に扮した「知らなくていいコト」(日本テレビ系、番組ホームページから)
吉高由里子さんが週刊誌のエース記者に扮した「知らなくていいコト」(日本テレビ系、番組ホームページから)


◆ 水曜ドラマ「知らなくていいコト」◆
日本テレビ系。毎週水曜日22時から。主演は吉高由里子。脚本を担当する大石静のオリジナル。週刊誌「週刊イースト」編集部で働く辣腕記者の真壁ケイト(吉高)がスクープを追う中で突き付けられる真実と向き合わなければならない心の葛藤......。動物カメラマンでケイトの元カレ、尾高由一郎役に柄本佑、ケイトとの婚約を破棄した野中春樹役に重岡大毅、週間イースト編集長の岩谷進役を佐々木蔵之介が演じている。

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生野あん子(しょうの・あんこ)
30歳代の会社員。映画、小説、ドラマなど、どんなコンテンツにもつい、社会的背景を思い描いて批評しようとする精神性の持ち主。
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