著名タレントによる脱税の表面化や消費増税があった2019年秋以降、引き続き税金への関心が高まっている。そうしたなか、税法の専門家から、興味深い問題が投げかけられた。
本書「ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか」がそれ。「えっ、ホームラン・ボールって税金がかかるの?」「しかも、二回?」と、タイトルからもギョッとするが......。
オークションサイトやフリマアプリが身近なツールになり、お宝ハンターや「転売ヤー」の活動が盛んになった現代にぴったりな税金の教科書。
「ホームラン・ボールを拾って売ったら2回課税されるのか」(浅妻章如著) 中央経済社
「興奮」感じる「二重課税」
著者の浅妻章如さんは、立教大学法学部教授。租税法学が専門で、研究対象の一つである「二重課税」について考えるきっかけを広く提供したいことが動機になって本書を執筆。初の単著という。
じつは、「二重課税」は身近な問題。その性質上、課税側と納税側とで意見が対立することがしばしばで、裁判が最高裁まで持ち込まれたケースがある。争いとなった場合の裁きは、ひと筋縄ではいかいない。
著者によれば、二重課税は「100年経っても租税法学の中で共通理解が達成されそうにない難題」で、その難題ぶりに「興奮」を感じているという。そして、その興奮を、多くの人に認識を共にしてもらいたいと、テーマに選んだ。
とはいえ、税金の話は一般の人には、やはり取っつきにくい。著者も「租税法学の入門書ではない」と断って、タイトルに惹かれて手にとった読者を突き放す。しかし、二重課税をめぐる「興奮」を共有したいとの思いは強く、「租税専門家以外を想定読者として書いた」。一般向けとしたことに、「私自身が難題と感じる興奮を、さまざまな機会にお伝えしたいと考えているから」と説明した。