「バッハ会長は空気を読んでない」
そんななか、私が注目したのは、ニュージーランドの「Radio New Zealand」の記事です。麻生大臣の「呪われた五輪発言」だけでなく、菅義偉官房長官の発言も紹介して、本当の課題は何かを浮き彫りにしています。
菅官房長官の「Japan is not making any preparations to postpone the 2020 Summer Olympics」(日本政府は、東京五輪を延期する準備はまったくしていない)とした発言を取り上げて、「stressing Tokyo's resolve to host the event as scheduled despite the global spread of coronavirus」(世界的なコロナウイルスの拡大にも関わらず、予定どおりにイベントを開催する東京の決意を強調した)と、伝えています。
記事では、「日本がコロナウイルスの制圧に成功したとしても、他の国々が選手を派遣できなかったら意味がないだろう」「日本の状況だけで判断できる話じゃない」という麻生大臣の発言も紹介しています。
コロナウイルスの爆発的な感染拡大で、生きるか死ぬかの状況を経験している海外の人々にとって、どちらの発言が非現実的に映るでしょうか。
じつは、IOCや日本政府が「東京五輪は予定どおり開催する」と強気な態度を続ければ続けるほど、各国の関係者やアスリートから「現実的じゃない」との批判が高まるばかり。IOCのバッハ会長も「山のような批判が届いている」ことを認めているほどです。
英国ボート界のレジェンドで、10個の世界選手権金メダルと4回連続のオリンピック金メダルを獲得したマシュー・ピンセント選手はツイッターで、「バッハ会長は『空気が読めていない』」と批判。オリンピックは「中止にすべきだ」と主張して話題になっています。
I'm sorry Mr Bach but this is tone deaf
(バッハ氏には申し訳ないけど、「空気が読めていないよ」)
tone deaf:空気を読む、音痴
慌てた(?)バッハ会長は、急きょ、各国のアスリート代表や関係者にヒアリングを開始したとも報じられていますが、次のコメントに彼の苦渋がにじみ出ているように感じます。
No solution will be ideal in this situation
(この状況では、理想的な解決策などない)
新型コロナウイルスの襲来という予測不能な事態に直面するIOCや日本政府関係者。オリンピックという巨大イベントのリスクが浮き彫りになっただけでなく、アスリートや人々の信頼も失ってしまったように思えます。
「cursed」(呪われている)のは、東京大会ではなく、IOCやオリンピックそのものの存在意義ではないでしょうか? (井津川倫子)