「2025年問題」――。「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となることから、その名が付いた。産業界では、この年に70歳を超える中小企業の経営者が約245万人。そのうちの約半数がにあたる約127万人が「後継者未定」(中小企業庁調べ)という大問題を抱えている。
本書「ドラッカーが教える最強の後継者の育て方」は、後継者の育成がうまくいっていない経営者らに向けて書かれた。日本を代表する経営者らのほか、世代交代をスムーズに進めた中小企業経営者らの考え方を取り上げた。
経営学の神様といわれたピーター・ドラッカーの発言に照らしてまとめられ、中小企業の2025年問題にどう取り組んだらいいか、ヒントが散りばめられている。
「ドラッカーが教える最強の後継者の育て方」(山下淳一郎著) 同友館
優れた経営の企業にワンマンはいない
著者の山下淳一郎さんは「ドラッカー専門」という経営コンサルティング会社の代表取締役。外資系コンサルティング会社でドラッカーの教えを実践する支援を行った経験を生かして、自ら会社を設立した。
ドラッカーについての著作を重ねており、経済やビジネスのメディアへの寄稿も多い。
著者が会社の会長や社長らと事業の将来について話しをすると、
「後継者を誰にするか何もきまっていない」
「会社の将来を考える人間は誰もいない」
「後継者の育成について、何も取り組んでいいない」
「経営をいつ誰にどうやって引き継げばいいか不安だ」
など、しばしば後継者の育成に関する悩みを聞かされる。
「世界で初めて経営の承継を取り上げた」ドラッカーは、どう言っているかというと、
「自らを存続させられない組織は失敗である。したがって、明日のマネジメントを担うべき人材を今日準備しなければならない」
と。
経営者は経営と同時進行的に「明日のマネジメントを担うべき人材」を準備しなければならないというわけだが、そのためにはどうすればいいか――。「後継者を育成し経営を承継するにあたって何からはじめればいいか。それはまず経営チームをつくること。これは誰がなんと言おうと絶対です」と、著者は言う。
ドラッカーは、こう言っている。
「トップマネジメントの仕事は一個人の能力を超える。経営者や組織論が何といおうとも、優れた経営を行っている企業にワンマンはいない」