政府が男女共同参画の一環として掲げた女性管理職の「少なくとも2020年までに30%程度とする」目標に対して、その達成状況は外資系企業が17.0%、日系企業は8.0%と、実現にはほど遠い、「お寒い状況」だったことが、転職エージェントのエン・ワールドの調査でわかった。2020年3月9日の発表。
日系企業の達成状況は、政府目標の半分にも満たない。
女性管理職、中小企業ほど多い
調査は、企業の人事、採用担当者に「女性管理職について」聞いた。それによると、女性管理職の「2020年 30%」目標について、「知っている」という人は6割弱だった。
「知っている」と答えた人に、「目標が達成できそうか」聞いたところ、「すでに達成している」と答えた人は、外資系企業に勤務する人で17.0%、日系企業は8.0%となった。日系企業は、政府目標にも遠いが、外資系企業と比べても約2倍の差があった。
「達成できそうな見込み」と答えた人でも、外資系企業は17.0%、日系企業は15.0%だった。
また、従業員数で比べてみると、5000人以上では「達成している」と答えた外資系企業が14.0%、日系企業が4.0%であるのに対し、500人以上~999人未満では外資系が16.0%、日系は14.0%。100人未満では、外資系が23.0%、日系でも20.0%と、中小企業ほど女性管理職の割合が高いことがわかった。
現在の女性管理職の割合を聞いたところ、外資系企業では「10~29%」と答えた人が40.0%、日系企業では「10%未満」が54.0%と、最も多かった。
また、この5年間で女性管理職の割合が増加した企業は、外資系で5割、日系で6割。従業員数が多い企業ほど、増加した割合が高かった。現状でやや遅れをとっている日系企業が、積極的に取り組んでいる様子が見てとれる。
この5年で女性管理職が「増加した」と答えた人に、どのように増やしたかを聞いてみると、外資系企業では「昇格と採用の両方」が50.0%で最も多かった。一方、日系企業では「既存社員の昇格」が52.0%で過半数を占めたことから、女性管理職登用の方法に、傾向の違いがあることがうかがえる。
「管理職を任せられる女性がいない」
「女性管理職登用でネックになっていることがあるか」との問いに、外資系企業の5割、日系企業の6割が「ある」と答えた。
具体的な理由としては、「管理職を任せられる女性の人材がいない」と答えた人が外資系企業で48.0%、日系企業で59.0%と、最も多かった。次いで、外資系企業が「性別を問わず、優秀な人材を管理職にしたい」(46.0%)で、日系企業は「管理職を任せたい女性が管理職になる意思がない」(42.0%)だった。
そのほかにも、
「そもそも女性が少ない」(外資系企業/製造業、自動車)
「産休育休時などでポジションが空席になってしまう」(日系企業/IT・通信)
「男性管理職がほとんどで女性管理職の受け入れに積極的でない」(外資系企業/建設・不動産)
など、一部ネガティブな声も見受けられた。
エンワールド・ジャパン人材事業部の永島亜紀氏は、
「企業は、男女関係なく仕事や成果で評価することに加え、管理職に起用した際の理由を社員に明確に伝えること。目指す姿、管理職のあるべき姿の共通認識をもつことが大事です。CSR(企業の社会的責任)の一環や、表層的な数字目標ではなく、女性管理職やダイバーシティ(多様性)採用の必要性を、経営層が本当に理解して登用するべきです」
と経営層に注文を付ける一方、
「管理職といわれると堅苦しく、覚悟がいることだと思いますが、最初から管理職の方はいません。思い切ってステージに上がってしまえば、ポジションや周囲からの期待で人は成長します」
としている。
なお調査は、2020年3月3日~5日、インターネットで全国の447人(外資系企業60%、日系企業40%)を対象に実施した。