なんと、県議の3分の1が無投票で「当選」する現実
だが、根本的な問題点は別のところにありそう――。それは、地方議会の議員の「質」の低下だ。
少子高齢化や人口減少の影響もあり、地方議会の議員のなり手不足が深刻化している。加えて、地方議会に対する地元住民の関心が低下していることで、地方議会議員選挙の投票率が低下し、無投票当選の割合が増加しているのが現実だ。
つまり、政策もなく、ポリシーも持たず、政策論争もできない地方議会議員が多く誕生しているということ。立候補すれば当選するという状況で、地方自治を担う議員の能力も人材も不足しているのだ。
総務省の「地方議会・議員のあり方に関する研究会」の資料によると、地方議会選挙の投票率は、以下のようになっている。
<都道府県議と市区議の投票率推移>(%)
1999年 2003年 2007年 2010年 2015年 2019年
都道府県議 56.70 52.48 52.25 48.15 45.05 44.02
市区議 57.02 52.94 53.37 48.93 46.46 44.45
2010年の地方議会選挙で投票率は50%を割り込み、直近の2019年の選挙では45%を割り込んでいる。地方の住民で投票に出かけているのは、住民有権者の半数以下にまで落ち込んでいる。
これに伴い、無投票当選する議員の割合が増加。無投票当選の状況は、以下のように推移している。
<都道府県議と市区議の無投票当選の推移>(%)
1999年 2003年 2007年 2010年 2015年 2019年
都道府県議 16.8 19.5 16.4 17.6 21.9 26.9
市区議 0.4 2.6 1.7 1.3 3.0 2.5
市区議では無投票当選の比率は低いものの、都道府県議では今や議員の3分の1近くが選挙により選ばれたわけではなく、無投票で立候補しただけで当選しているのが実態だ。
2018年12月31日時点の全国 815 市区議会における議長と議員の平均報酬月額は、議長が51万7100円、議員が42万1800円。約130万円の報酬月額がある国会議員に比べれば、確かに少ないものの、平均的なサラリーマンと比較しても遜色ない水準だろう。 都道府県議に至っては、平均月額報酬は81万3000円と平均的なサラリーマンよりもはるかに多額の報酬を得ている。
こうした状況にありながら、他の職業との兼職が許されているわけだ。「選挙で落ちれば無職」ということもあるかもしれない。しかし、無投票で当選している都道府県議が3分の1もいる。地方議会議員であれ、公職に携わるものとして相応の覚悟が必要であり、議員としての理念や政策を持っていなければならない。
地方自治を司る地方議会議員が役割を十分に果たせないのであれば、地方議会議員のあり方について、本格的に見直す必要があるのではないだろうか。(鷲尾香一)