ストーカー、家庭内DV、リベンジポルノ...... 減らない性暴力 「ネットのせい」は本当か!?(鷲尾香一)

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   性暴力に抗議し、性的被害者の痛みを分かち合おうと花を手にした人々らが集いはじまった「フラワーデモ」が、国際女性デーの2020年3月8日に全国各地で開かれた。

   性暴力の現状をみると、ストーカー行為への相談件数は減少傾向にあるものの、家庭内DV(ドメスティック・バイオレンス)とリベンジポルノの相談件数は、過去最多を更新し増加が続いている。

   3月5日、警察庁が「2019年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」を発表した。ストーカー相談等件数は、前年比3.0%減の2万912件と、2018年から減少からの減少傾向が続いている。

   ストーカー規制法に基づく警告は2017年年から減少に転じ、2019年も前年比16.3%減の2052件にとどまった。ところが、一方で接近禁止命令などは17年から急増しており、19年も同18.8%増の1375件と法施行後の最多を更新した。

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増加する「接近」禁止命令

   ストーカー規制法違反の検挙は2018年から減少に転じ、19年も0.7%減の864件と減少。関連する刑法犯・他の特別法犯の検挙は17年から減少に転じ、19年も6.5%減の 1491件となった。

   犯罪種では、住居侵入が最も多く303件。次いで脅迫が227件、暴行が139件、器物損壊が120件、迷惑防止条例違反が104件、その他が151件となっている。

   ストーカーの被害者は、男性が2509人(構成比12.0%)、女性が1万8403人(88.0%)と女性が圧倒的に多く、被害者の年齢では20歳代が7089人(34.5%)、30歳代が4956人(24.1%)、40歳代が3846人(18.7%)、10 歳代が2219人(10.8%)の順だった。

   一方、加害者の性別は男性が1万6980人(構成比81.2%)を占め、女性が2527人(12.1%)となっているが、ストーカーが不明も1405人(6.7%)にのぼっている。加害者の年齢は、40歳代が4093人(19.6%)と最多。次いで30歳代の4064人(19.4%)、20歳代の3842人(18.4%)、50歳代の2555人(12.2%)となっている。

   被害者と加害者の関係をみると、交際相手(元を含む)が8907人(42.6%)と半数近くを占め、知人友人は2600人(12.4%)、 勤務先の同僚・職場関係は2551人(12.2%)だった。

   ストーカー行為としては、つきまとい・待ち伏せ等が1万413件、面会・交際の要求が8233件、乱暴な言動が3340件、性的羞恥心を害する行為が1215件、監視していると告げる行為が1190件の順。

   ストーカーは相談件数、警告件数とも減少が続いているものの、接近禁止命令は増加して過去最高となり、警告でストーカー行為が止まないケースが増加している。依然として、ストーカー行為がエスカレートし、殺人にまで至るケースの出ていることから、今後もストーカー行為の被害者保護を十分に行っていくことが望まれる。

配偶者からのDVも増えている

   配偶者からの暴力事案等(いわゆる、DV)の相談等件数は増加の一途を辿っている。2019年は前年比6.1%増の8万2207件と、DV防止法施行後の最多件数を更新した。

   DVによる「保護命令」違反の検挙は、前年と同じ71件だったが、配偶者からの暴力事案等に関連する刑法犯・他の特別法犯の検挙は、18年と比べて0.8%増の9090件となった。犯罪種では、暴行が5384件、傷害が2784件となっている。

   DV防止法に基づく裁判所からの書面提出要求は1959件に、裁判所からの保護命令通知は1663件(このうち、接近禁止命令・電話等禁止命令は1138件)にのぼっている。

   被害者の性別では、男性が1万7815 人(21.7%)に対して、女性は6万4392人(78.3% )で、年齢では30歳代が2万2717(27.6%)、40歳代が1万9701人(24.0%)、20歳代が1万9385人(23.6%)の順。

   一方、加害者の性別では男性が6万4344人(78.3%)、女性が1万7863 人(21.7%)で、年齢では30歳代が2万2088人(26.9%)、40歳代が2万0481人(24.9%)、20歳代が1万7057人(20.7%)の順。

   被害者と加害者の関係では婚姻関係(元を含む)が6万2119人(75.6%)を占め、内縁関係(元を含む)が6174人(7.5%)、生活の本拠を共にする交際をする関係(元を含む)が1万3914人(16.9%)となっている。

   DVは被害者、加害者ともに男性約2割・女性約8割という比率で、20歳代、30歳代、40歳代にほぼ同数で発生している。DVは身近な存在だけに習慣性を持って行われるケースが多く、殺人に発展するケースも多い。

   ストーカーが減少傾向にあるのに対して、DVは増加を続けており、DV被害者を出さない取り組みを一段と強化することが重要だ。

リベンジポルノ、被害者は20代以下で7割

   さて、私事性的画像に係る事案(いわゆる、リベンジポルノ)も増加の一途。2019年の相談等件数は、前年比9.8%増の1479件にのぼった。相談等内容では「画像を公表すると脅された」が584件、「画像を所持されている・撮影された」が494件、「画像を公表された」が272件、「画像を送りつけられた」が239件。

   被害者の性別は男性が97人(構成比6.6%)に対して、女性は1382件(93.4% )と、圧倒的多数だ。年齢でみると、19歳以下が376人(25.4%)、20歳代が637人(43.1%)、30歳代が235人(15.9%)で、20歳代以下が約7割を占めている。

   加害者の性別は、男性が1249人(84.4%)、女性が88人(5.9%)だが、不明も142人(9.6%)となっており、年齢では、19歳以下が182人(12.3%)、20歳代が393人(26.6%)、30歳代が289人(19.5%)、40歳代が192人(13.0% )となっている。

   驚きなのは被害者と加害者の関係で、交際相手(元を含む)が912人(構成比61.7%)と最も多いのだが、次いでネット関係のみの知人友人が182人(12.3%)もおり、知人友人(それ以外)の154人(10.4%)よりも多数となっていることだ。

   相談件数は増加しているものの、私事性的画像被害防止法違反での検挙は2018年に減少に転じ、2019年も前年比5.6%減の34件にとどまっている。

   しかし、そこには被害者の約7割を20歳代以下が占め、ネット関係だけの交友関係でありながら、リベンジポルノの被害を受けるという驚きの状況がある。

   今後も若い女性を中心に、啓蒙活動を続けていくことの重要さが現れている。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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