「国が言ったから、始めちゃった」では済まされない!
このように、テレワークを導入する場合には就業規則等の整備が必要です。万が一、整備することなくテレワークが導入されている場合、ルールがないわけですから、労使のトラブルが起こりやすくなります。
そして、何かトラブルが起こった際には、経営者や役職者が、そのたびに個別に対応を検討しなければならなくなります。
たとえば残業代については、会社側に支払義務があるため、就業規則や労使協定がなくても所定労働時間を超えた分についてはあとから社員が請求することができます。
テレワークに関する規定がないのであれば、労働基準法などの法律にしたがった支払いが必要となります。情報漏えいの場合などは、会社側は就業規則に違反しているという主張ができなくなりますから、会社としては懲戒処分や損害賠償請求を、裁判で争われた場合には大きく不利になるでしょう。
就業規則などが整備されていないということは、社員にとって何が許されていて、何が禁止されているのかの判断ができないのみならず、会社としても、労働基準法などの法律に違反しやすい状態にあるということができます。
テレワークの導入にあたっては、社員とのあいだで十分に議論を尽くしたうえで、会社の実情にそった規定を整備することが求められているといえます。
◆ 今週の当番弁護士 プロフィール
磯田直也(いそだ・なおや)
弁護士法人グラディアトル法律事務所所属弁護士
広島大学法学部卒業後、大阪大学大学院高等司法研究科修了。「交通事故」「労働」「離婚」「遺言・相続」「インターネットトラブル」などを得意分野とする。