新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府が「テレワーク」を推奨していることで、その注目度が増しています。
「会社に行かなくていい」
「意外と仕事がはかどる」
など、ネットでは歓迎のコメントも多く見受けられますが、
なかには、
「残業代はどうなるのか?」
「交通費や家賃補助などはどうなるのか?」
といった、モヤモヤを抱えたまま仕事をしている人もいるようです。
そもそもテレワークは、東京五輪・パラリンピックの開催期間中の働き方を見据えた取り組みということもあり、今後本格化されることに対する疑問や悩みが「前倒し」されて浮上してきたようです。
今回はこちらのご相談を、グラディアトル法律事務所の「闘う弁護士」、磯田直也先生に聞きました。慌ててスタートした会社も少なくないようですが、やらなければならないことは満載です。
会社の準備、テレワークはすぐに始められるの?
●会社がテレワーク勤務を命じるためには、就業規則の作成などが必要になる
労働基準法89条では、「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇」、「賃金の決定、計算及び支払の方法」について、就業規則を作成し、届け出なければならないと定められています。
そのため、テレワークの導入に当たっては、就業規則にテレワークに関する規定を設けたり、就業規則とは別にテレワーク勤務規定を新たに作成する必要が出てきます。
法律上、就業規則の作成が要求されていない場合でも、同様の内容について労使協定を結んだり、労働条件通知書で労働者に通知する必要があるでしょう。
テレワークにおける労働時間は、これらの定めの中で明確にする必要があります。具体的には、会社のおかれている状況やテレワーク勤務者の仕事の仕方、業務内容によって、会社側で適切な労働時間制を選択していくことになります。
また会社としては、テレワーク勤務であっても、従業員の労働時間を把握し、これを記録しておかなければなりません(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準、2001〈平成13〉年4月6日 基発第339号)。
●会社が残業代を支払ってくれない場合にはどうしたらいい?
まず、残業代の請求にあたっては、就業規則の定めを確認しましょう。
テレワーク勤務の場合の残業代の請求においては、就業規則などにどのような労働時間制が採られているのか、を確認する必要があります。一例として、「事業場外みなし労働時間制」が採用されている場合であっても、仕事の量が多く、会社が定めた「みなし労働時間」を超えてしまう場合には残業代が発生することになります。
ちなみに、「事業場外みなし労働時間制」とは、労働者の実働時間と関係なく、会社があらかじめ定めた1日の労働時間をその労働者の労働時間と「みなす」制度で、テレワークとは相性が良いと考えられています。
会社側としても、残業代がどれくらい発生しているのかについては当然把握しておく必要があるので、時間外労働について事前に許可を取ったり、事後に報告したりすることが必要と思われます。
未払いの残業代を争う場合には、実際に残業した証拠が必要になりますから、メールや電話によって労働時間の前後に報告を行うことや、勤怠管理システムに適切な入力を行うことが必要となるでしょう。
つまり残業代の請求には、「証拠」が必要になるのです。