会社員と同じように働いているフリーランスも助成されない可能性大
その一方で、この雇用調整助成金は労働者を雇用している会社に対して助成されるものですから、フリーランスや個人事業主に対して助成されることはないほか、会社が雇用関係にないフリーランスや個人事業主の方に対して支払う金銭等についても助成されないことになります。
では、フリーランスや個人事業主として、会社と業務委託契約などを結んでいた場合は、会社員と同様に助成金をもらうことはできないのでしょうか?
おそらく、多くのフリーランスや個人事業主の方が、そう思ったのではないでしょうか。
前述のように、雇用調整助成金は、「労働者」の雇用維持を図った会社を対象に助成します。法律上、労働者に当たるか否かは、実態として使用者(会社)の「指揮命令の下で労働し」、かつ、賃金を支払われていると認められるか否かにより決せられると考えられています(労働基準法9条、労働契約法2条1項)。
一般に、会社が活動するに当たり必要な業務は、「雇用契約」、「派遣契約」、「業務委託契約」の3つの契約形態で実現されます。このうち雇用契約と派遣契約は、会社からの指揮命令を受ける立場となるものですが、業務委託契約は原則として事業者の指揮命令に服する立場とはなりません。
そのため、仮にフリーランスや個人事業主の方が、企業と業務委託契約を結んでいたとしても、「労働者」に当たらないことになり、支給の対象とはならないでしょう。
さらに、フリーランスや個人事業主が、契約している会社の社員と同様に出勤している場合でも、「労働者」には当たらないのでしょうか?
フリーランスや個人事業主の方が、契約している会社の社員と同様に出社するように指示されていて、勤務場所や勤務時間が拘束されている場合や、「その会社の仕事しかできない」といった専属性がある場合、報酬が時間給や日給で与えられていて仕事の成果によって定められていない場合などには、業務委託契約という契約の形式に関わらず、実質的に労働者であると判断されることがあります。
しかし、助成金が受給のための手続きをした会社に対して支給されるものである以上、雇用契約ではなく、あえて業務委託契約を締結しているにもかかわらず、フリーランスや個人事業主の方を会社の指揮命令の下で働く労働者であるとして会社が受給手続きをすることは考えづらく、会社はこれらの方については助成金の支給対象の労働者には当たらないことを前提に手続きすることになると考えられます。
具体的には、たとえばフリーランスのライターやカメラマンで、会社から取材や撮影の仕事を受注していたケースで、新型コロナウイルスの影響でキャンセルになってしまった場合でも、助成金で対応してもらうことはできないでしょう。