韓国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。2020年3月5日現在で感染者は6284人、死者は43人に達した。
このパンデミックを引き起こした「元凶」とみられているのが、新興宗教団体「新天地イエス教会」だ。検察当局が、この団体を「殺人罪」や「傷害罪」で捜査する可能性がある。 その背景には朴槿恵(パク・クネ)前大統領との関係まで浮かび上がり、政争がらみのキナ臭い動きまで出ている。韓国紙で読み解くと――。
感染者全体の6割を占める宗教団体の正体
「新天地イエス教会」に、ついに「殺人罪」などで告発されることになった顛末を聯合ニュース(2020年3月2日付)「ソウル市 宗教団体教祖を殺人罪などで告発=新型コロナ巡り」が、こう伝える。
「ソウル市は3月1日夜、新型コロナウイルスの集団感染が発生した新天地イエス教会の教祖、李万熙(イ・マンヒ)総会長(88)ら同団体の幹部を殺人罪や傷害罪、感染病予防・管理に関する法律違反などの疑いでソウル中央地検に告発した。同市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長は自身のフェイスブックに、『彼らを強制捜査してこそ感染症を一日も早く収束できる。彼らが積極的な措置を取っていれば多数の国民が死亡に至ったり傷害を被ったりすることも未然に防げた』と投稿。『検察は今回の事態の重要責任者である新天地の指導部に対する迅速かつ厳正な捜査により、国民が納得できる処罰が行われるようにしなければならない』と求めた」
新天地イエス教会の信者たちがいかに感染源となっているか。具体的な数字をみると、よくわかる。韓国政府の中央防疫対策本部によると、3月1日午前9時時点の韓国全体の感染者は3526人だった。
そのうち、発生地大邱(テグ)にある新天地の教会の関係者が2113人だった。なんと、感染者全体の6割(59.9%)に当たるのだ。
しかも、政府の調査に極めて非協力的だった。「宗教弾圧だ」というのである。同団体は2月末に出した声明で、保健当局に計24万5605人の信者の名簿を提出したと明らかにした。ところが、名簿はあちこちで飛んでおり、虚偽の記載や隠ぺいされたあとが多数あった。防疫当局が信者たちを調査しようとしても妨害にあったり、信者たちが逃亡したりした。
ソウルに住む信徒の中には、警察力を動員しても調査できなかったケースが274人もいた。全国的には3月1日の時点で、まだ約4000も調査を受けていない状態だったのだ。パク・ソウル市長が激怒して、新天地イエス教会の幹部たちを「殺人罪」などで告発したのも無理はなかった。