新型コロナウイルスの感染をめぐる状況に、企業が懸念を募らせている。
帝国データバンクが、企業に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、6割以上が業績に「マイナスの影響がある」と答えた。感染拡大が続くなか、政府が対策強化を打ち出す機会をとらえて、マイナスの影響を見込む割合が増加する動きがみられた。
また、2020年3月3日時点の上場企業の業績修正の動向をみると、上場企業の50社(連結・非連結)が業績の下方修正を発表。総額2648億円の売り上げが吹っ飛んだ。製造業が大きなダメージを受けた。3月4日、6日の発表。
日に日に増える「マイナスの影響」がある企業
感染拡大がなかなか収まらない、新型コロナウイルス。調査(2020年2月14日~29日に実施。有効回答は1万704社。回答率45.2%)は、まず企業に影響の有無を聞いたところ、「すでにマイナスの影響がある」(30.2%)と「今後にマイナスの影響がある」(33.2%)を合わせ、63.4%が「マイナスの影響」を見込んでいた。「影響はない」とする企業は16.9%。「プラスの影響がある」と答えた企業は1.7%だった。「わからない」は18.0%=下グラフ参照。
調査期間中、「マイナスの影響」を見込んだ企業は、日を追うごとに増加。2月25日に政府が「新型コロナウイルス感染症の基本方針」を決定して以降は、その傾向が顕著になり、特に「すでにマイナスの影響がある」と回答した割合を日ごとにみると、調査開始の2月14日には24.5%だったが、最終日の29日には45.4%まで上昇した。
29日に「マイナスの影響がある」と答えた企業は81.7%に達した。
「マイナスの影響がある」を見込む企業を業界別にみると、「運輸・倉庫」が72.8%と最も高く、「卸売り」(72.5%)、「小売り」(66.9%)、「製造」(66.8%)、「金融」(56.8%)と続いた。
ただ、製造業は35.9%が「今後にマイナスの影響がある」と回答。全業界で、最も先行きに懸念している割合が高かった。
個別企業からの声として、
「中国への輸出入が止まっており物流が激減している」(一般貨物自動車運送、新潟県)
「生産を主に中国に依存しており、中国での生産の遅延により商品の調達遅れが生じる可能性がある。また、小売店舗での販売減少が影響」(衣服・身の回り品卸売、東京都)
などが寄せられた。
「かつてないほどの大変な不況」
また「マイナスの影響がある」を見込む企業の業種別では、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」と「旅館・ホテル」が89.3%と最も高い割合。さらに、「再生資源卸売」(85.7%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(87.1%)、「飲食店」(80.9%)が8割台で続いた。
すでに旅行自粛やイベント中止でキャンセルの多発が取り沙汰されている。
「旅館・ホテル」は、71.4%が「すでにマイナスの影響がある」と回答。
「当初は、個人旅行、中国を含め外国籍の団体のキャンセルが相次いだ。現在は、宴会などを中心に相次いでいる」(旅館、東京都)などといった苦境がにじむ。
「業界にとって、かつてないほどの大変な不況が訪れることは避けられそうになく、個々の企業で対応できるレベルではない」(旅館、北海道)
「今後マイナスの影響がある」と見込んでいる企業は「家具類小売」の41.7%がトップ。次いで、「自動車・自動車部品小売り」(41.5%)や「再生資源卸売り」「パルプ・紙・紙加工品製造」(ともに40.6%)が上位となった。
その一方で、「プラスの影響がある」を見込む企業は、「医薬品・日用雑貨品小売」(12.0%)が唯一1割台となり、最も高かった。
エイチ・アイ・エスは1250億円を下方修正
さらに個別企業の業績をみると、3月3日時点で「新型コロナウイルス」の影響を受けたとして業績の下方修正(連結、非連結)を発表した上場企業は50社。その内訳をみると、東証1部が29社(重複有)、東証2部が12社(重複有)、東証マザーズが5社、ジャスダックが3社、東京PRO市場が1社だった。
この50社の下方修正で減少した売上高の合計は、2648億2200万円。修正額が大きかったのは、旅行代理店大手のエイチ・アイ・エス(東証1部、連結)の1250億円。住友化学(東証1部、連結)800億円減、三菱ロジスネクスト(東証1部、連結)の400億円減と、大きく減らした。
減少率でみると、2ケタの減少率となったのは7社(20%台2社、10%台5社)で、そのうち修正の減少幅が最も大きかったのは、栃木県で静電吸着・搬送装置システムの開発・製造を行っている筑波精工(東京PRO、非連結)の27.9%減だった。