FB「リブラ」は仮想通貨の「始まり」の始まり? 金融当局は計画を潰せない

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発行の意義は「金融包摂」

   フェイスックがステーブルコインの体裁を整えてリブラを世に問うのは、発行の意義として同社が強調している「金融包摂(financial inclusion=フィナンシャル・インクルージョン)の裏付けのためだ。

   金融包摂とは、貧困や地域的な理由から金融サービスを受けられない人たちに、貯蓄や保険、送金などへのアクセス環境を整えること。FBは、リブラによって、世界中で17億人いるという銀行口座を持たない人に支払い手段を新たに提供できると主張しており、低所得者らが負担している支払いコストの軽減にも役立つと指摘している。

   今の決済システムは、とりわけ貧困層にとってはコストが高い。世界銀行によると新興国の出稼ぎ労働者は、本国の家族への送金で平均6.9%の手数料を支払っている。

   リブラが実用化されれば、さらに多くの利用者が考えられる。FBの関連アプリユーザーは世界で27億人おり、リブラの使い勝手によってはそのほとんどが、そのユーザーになる可能性もある。その人数は、18年の世界の人口73億人の37%ほど。可能性としてのことだが、世界の現金発行額約31兆ドルのうちリブラが37%を代替すると、現金は減少するが、その額は11兆5000億ドル、日本円にして1240兆円程度となる。その分の中央銀行の利子所得は減り、それと引き換えにリブラ協会が利益をあげることになる。

   リブラ協会は、リブラの発行と引き換えに受ける代金を主要法定通貨で構成される銀行預金や短期国債などで保有する。「リブラ・リザーブ」だ。そこには巨額の運用収益が発生。仮にリブラが現金11兆5000億ドルを代替すると、ほぼ同額のリザーブを協会が保有する。すべて米短期国債で保有するとなると、だいたい2%程度の利子所得が見込まれ、その規模は2300億ドル、日本円で25兆円ほどになる。

   中央銀行は通貨発行にかかわる利子所得(通貨発行益)を国庫に納付し社会に還元するが、リブラ協会はそうしない。「同じ社会インフラを担う存在であっても、既存の中銀とリブラ協会のあいだには大きな違いがある」のだ。

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