新型コロナウイルスの感染拡大による品不足で、薬局などの店頭からマスクが姿を消している。その一方でマスクを買い占め、インターネットのフリーマーケットで高額でマスクを転売する事態が発生し、大きな批判を呼んでいる。
こうした事態に対して、政府はマスクの転売行為を禁止。違反者には罰則を科す措置に乗り出した。
メルカリ、ヤフオク 転売「責任回避」へ先手
NHKは3月5日正午のニュースで、政府は「マスクの買い占めやインターネットでの転売を禁止することなどを盛り込んだ総合対策を取りまとめる」と報道した。「国民生活安定緊急措置法」などに基づき、検討を進めている。
安倍晋三首相も前日の4日、「一部の人たちが転売目的で大量に買っていることに、どのような手段で強制力をもって対応できるか、早急に検討している」と、マスクの転売禁止に対する取り組みに前向きな姿勢を示していた。
「国民生活安定緊急措置法」は第1次オイルショック時の1973年に制定。トイレットペーパーや洗剤など、原油価格と直接関係のない物資の買占め騒動に端を発した一連の事態から、物価の高騰その他の日本経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とした。
政府はこの法律を活用し、マスクの買い占めと転売に歯止めをかける狙いだ。具体的は、同法26条を適用するとみられる。この26条には、「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、(中略)当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる」とある。
罰則は、「5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」としており、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して罰金刑を科す」としており、「メルカリ」や「ヤフーオークション」といったネットのフリーマーケットも責任を問われる可能性がありそうだ。
悪者扱いに転売業者の言い分
こうした動きに先手を打つように、メルカリでは1000円以上のマスクの出品を禁止にするなど、各サイトでは規制に乗り出しているが、ネット上では政府の対応に賛意を示す声が多く出されているとともに、マスク転売を許しているサイトの責任を問う声も出ている。
マスク転売者に対しては怒りの声が殺到しているが、これに対して、「マスクを購入するために何軒もドラッグストアを回れば感染リスクがある。それを販売するのだから代理購入手数料を取るのは当然」と言い放つ転売者もいる。
加えて、「マスクだけではなく、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、消毒用アルコール、除菌シート、除菌スプレーなども転売禁止にして欲しい」といった、マスクと同様に品薄になっている日用品に対しても、同様の規制を行って欲しいという声まで上がっている。
今後は、こうしたマスク以外の商品に対しても「規制」が広がるのか、広がるとしたら、対象となる商品の範囲はどうなるのか。消費者としては気になるところだが、発表したとたんに、買い占め騒ぎが起こったトイレットペーパーの二の舞になる懸念もないわけではない。
とはいえ、マスクの品不足は深刻で、医療機関・医療関係者や高齢者施設・高齢者といった新型コロナウイルスに対するリスクが高い人たちが、マスクを使えないという事態にまで発展しており、政府の今回の措置は「遅きに失した」感が否めない。(鷲尾香一)