【襲来!新型コロナウイルス】政府対策、安倍首相の「本気度」は? 「2700億円」助成金は見切り発車か(鷲尾香一)

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   安倍晋三首相が矢継ぎ早に打ち出す新型コロナウイルス対策が、混乱を巻き起こしている。特に、全国すべての小中高校と特別支援学校の臨時休校は、大きな反響を呼んでいる。

   2020年2月27日、安倍首相が3月2日から全国すべての小中高校と特別支援学校に臨時休校を要請すると発表した。発表が木曜日で、3月2日は月曜日。つまり、臨時休校への準備は2月28日の1日だけという「無計画さ」が、さまざまな混乱を引き起こしている「元凶」だ。

  • 3月2日から、小中高校は臨時休校に……(写真は、安倍首相。2017年9月撮影)
    3月2日から、小中高校は臨時休校に……(写真は、安倍首相。2017年9月撮影)
  • 3月2日から、小中高校は臨時休校に……(写真は、安倍首相。2017年9月撮影)

日本の新型コロナウイルス対策は脆弱だ!

   3月は、学期末を迎える。期末試験、学年での成績、受験など重要な時期でもある。期末試験、終業式、卒業式の取り止めといった事態も発生し、子供たちは大きなショックを受けた。しかし、なかでも大きな反響を呼んだのは、臨時休業による保護者の対応だった。

   子どもが休校すれば、家庭での対応が不可欠になる。共働きが多き現代では、両親のどちらかが休みを取らなければならない。

   ひとり親家庭や親が非正規雇用者の場合には、休みを取ることで収入が減少し、生活が苦しくなる可能性もある。親が医療関係者などであれば、休みが取れないという事情もある。

安倍首相は新型コロナウイルスを封じ込める気があるのか?
安倍首相は新型コロナウイルスを封じ込める気があるのか?

   政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の岡部信彦委員は、安倍首相の判断に対して、「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」と、厳しく批判している。

   しかし、根本的な問題として安倍政権が本気で新型コロナウイルスを封じ込めようとしているのかが問われる。

   新型コロナウイルスに対する政府の緊急対策費で見れば、日本の新型コロナウイルス対策がいかに脆弱であるかが明らかだ。

他国と比べてケタ違いに少ない対策費

   JETRO(日本貿易振興機構)が情報提供している新型コロナウイルスに対する各国の対策などを取り上げると、新型コロナウイルスの発生源となった中国周辺国では、以下のような規模の予算を投じている(2月末現在)。

・中国―約1兆500億円
・香港―約4000億円
・シンガポール―約5000億円
・台湾―約2200億円

   これに対して、日本の予算は153億円でしかない。東京都ですら401億円を計上しているのにだ。まさに、他国と比較すればケタが違う。米国ですら約2700億円の補正予算を議会に要請している。

   そのうえ、日本の対策費はそのほとんどが医療体制の強化や感染防止策のために計上されているが、たとえば香港では学生や低収入家庭に対する補助金を支給。2020年度予算案でも、18歳以上の全市民約700万人に約14万円を支給するなど、前述のほとんどの国が休業補償を盛り込んでいる。

   安倍首相は2月29日の記者会見で、予算から「2700億円」の予備費を活用して、正規・非正規を問わず、子どもを持つ保護者が休業した場合の助成金を、新たに創設すると表明した。しかし、そのすべてが対策費として使えるとは限らず、また実際にいつから助成してもらえるのかも明らかではない。

   全国すべての小中高校と特別支援学校に臨時休校を要請するのであれば、まずは臨時休業を行った場合に発生する問題点を抽出し、その問題点への対応策を検討。具体的な計画を準備したうえで取り組む必要がある。

   現状の「付け焼刃」的な対策では、新型コロナウイルス対策そのものがうまく機能しない可能性がある。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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