アプリじゃなく専用機にした理由
オンライン端末としてさらに評価が高まったのは、インターネットの契約がいらないことだ。通信キャリアとの煩わしいやり取りをしないで済み、毎月の通信料金の支払いもない。それをどう実現したかというと、世界126か国・地域で使えるSIMの同梱によって、製品購入時に通信料をチャージしてもらうようにしており、買ったらすぐに使えて2年間は更新手続きを不要にした。2年後に更新しなくても、Wi-Fiにつないで使うことができる。
お客と契約を結ぶのは、確実にお金を支払う約束を履行してもらうため。「しかし、これは料金を徴収する側の論理ではないか。利用する側からすれば、どうして契約なんて面倒なことが必要なのか......」と松田社長。ネット接続を購入者任せにしたとすると、現状の10分の1も売れなかったと思うと述べる。
松田社長は学生時代から英語について熱い思いを持っていて、ソースネクスト創業の6年後から、手のひらサイズの翻訳機を作るためのプロジェクトを立ち上げていたという。
会社が危機を脱するのと前後して、テクノロジーやITをめぐる環境の進化が加速。AI通訳・翻訳の精度は格段にあがり、いよいよポケトーク開発への機運が高まる。
製品化の段階には社内外から、「製品化後はスマホのアプリ化しよう」という提案や、「なぜアプリにしなかったのか」という意見が寄せられたという。創業以来、ソースネクストはパソコンソフトで成長した企業。その伝統からはアプリのほうがしっくりするし、アピールもするはず、というのがその理由だ。