ほかの教会にスパイ信者を送り込み、乗っ取る手口
ハンギョレによると、「新天地」の正式名称は「新天地イエス教証(あか)しの幕屋聖殿(まくやせいでん)」。自ら「新天地イエス教会」と略して呼ぶ。「新天地」はイ・マンヒ総会長(89)によって1984年に設立された。「新天地」は「聖書通りに創造され現れた約束の聖殿」とし、イ・マンヒ総会長のことを、黙示録を証明する「約束の牧者」と紹介する。要するに、イ・マンヒ総会長は「イエス・キリストの再臨者」というわけだ。
ハンギョレが「新天地」の問題点をこう続ける。
「プロテスタントが最も警戒するのは新天地の布教のやり方だ。新天地は正統教会やカトリック教会を草刈り場と認識し、いわゆる『刈り入れ屋』という秘密要員を既存教会に浸透させ、信者を惑わせて引き抜くというのだ。特に、牧師の不正などをでっち上げて仲間割れを引き起こし、牧師を追放した後に教会を丸ごと乗っ取る手法を使っているという。だから、プロテスタント界は新天地異端対策委員会を設置し、かなりの数の教会が『新天地アウト』『新天地アウト』などの標識を教会の入口に掲げて、信者に警戒を促している」
問題なのは、新天地にはこうした「特殊布教」(刈り入れ)の訓練を受けた信者だけでも5万~10万人おり、彼らが他の宗教団体の教会だけでなく、無料英語教習所や塾・予備校などを根拠地にして小中高生や大学生を布教したり、職業軍人たちを布教対象にしたりしていることだ。
このため、在韓米軍の軍人・軍属にも信者がおり、在韓米軍のロバート・エイブラムス司令官は2月20日、米軍基地内にも感染が広がっている恐れがあるとして、新天地の教会を訪問した兵士や基地で働く韓国人労働者に自宅隔離を命じ、基地内の学校や保育施設を閉鎖したほどだ。
さらに問題なのは、他の宗教団体に潜入する「刈り入れ屋」の信者たちは潜入した宗教団体と二重教籍となっている場合が多く、新天地がその名簿を提出しないため、韓国政府も把握できないことだ。「刈り入れ屋」は既存教会の日曜礼拝に参加しないと新天地教徒と疑われるため、感染した状態で既存教会に来る可能性が高く、そうなれば感染が大きく拡散する恐れがあるのだ。
キリスト教徒が全人口の1%しかいない日本に比べ、韓国では全人口の約30%がキリスト教徒だ。ちなみに文在寅大統領もカトリック教徒である。多くのキリスト教教会に潜入した「刈り入れ屋」が日曜ごとに開かれる礼拝に参加して、一気に感染を広げた可能性も指摘されている。