2019年4月に改正入国管理法が施行され、外国人労働者の受け入れに道を開いたことで、日本は「移民国家」へと舵を切った。
安倍晋三首相は国会の答弁で「移民政策はとらない」と繰り返しているが、すでに日本の経済は「移民」抜きでは成り立たないということが「非公然の事実」になっている。
そして、少子高齢化の進み方に照らせば、今後は街に、職場に、ますます外国人が溢れていくであろうことは、誰の目にも明らかだ。本書「となりの外国人」は、移民先進地域などを引き合いに、外国からの「移民」との付き合い方を論じている。
「となりの外国人」(芹澤健介著) マイナビ出版
日本の「移民」広辞苑の「定義」で146万人、国連式なら280万人
「人手不足が深刻化しているため、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受けいれていく仕組みを早急に構築する必要がある」――。
安倍首相は2018年6月の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)で、少子化や人手不足への対応について触れ、こう述べた。そして早くも同年秋の臨時国会で改正入管法を可決した。産業界から強い要請があったことをうかがわせる。
「拙速すぎる」と反対する野党を押し切る格好で走り、19年4月に施行されたが、安倍首相は「移民政策は断じてとらない」と強調。「深刻な人手不足に対応するため、即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れる」などと繰り返していた。
安倍首相が「移民政策はとらない」と言い続け、日本国内にいる「移民」の存在を否定しているのは、移民という言葉にネガティブなイメージがあり、選挙でプラス要因にならないことが考えられる。
自民党独自の定義では、「入国時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受け入れは『移民』には当たらない」というもの。この定義だと、日本にはほとんど移民がいないことになる。
一方、広辞苑の「移民」の定義は「他郷に移り住むこと。特に、労働に従事する目的で海外に移住すること」。国連統計局では「国外で3か月以上暮らす人」を「短期移民」、「1年以上」だと「長期移民」と呼ぶ。広辞苑の定義に従えば、日本の「移民」は約146万人。国連式のカウントなら約280万人になる。