中国発の新型コロナウイルスによる肺炎の国内感染が拡大するなか、大手百貨店では店頭で接客にあたる販売員へのマスクの着用を徹底、義務付けはじめている。
国内では感染が広がっているばかりか、感染経路がわかっていない罹患者が現れたことなどで、予防のためのマスクを買い求める人が殺到。マスク不足が深刻化している。これに対して百貨店では、売り場の販売員からマスクの支給を望む声が高まっている。
三越伊勢丹は1階と食品売り場で義務づけ
新型コロナウイルスの感染拡大で、百貨店の販売員にマスクの着用を認める動きが広がったのは、2020年1月下旬のこと。それまで、「お客に失礼にあたる」などとして、ふだんはマスクの着用を認めていなかった百貨店だが、中国からの買い物客が増える春節を前に、販売員の健康と安全を考慮して、希望者を中心にマスクの着用を認めた。
ところが春節は越えたものの、国内感染は広がるばかり。予防として有効とされる「マスク」が、東京都内のドラッグストアから消えた。
ある大手百貨店に勤める女性販売員は、
「売り場には、マスク着用の原則義務付けが言われました。薬局は売り切れだし、そうであれば当然(マスクが)支給されると思っていました。ところが、支給しないばかりか、『大人のたしなみとして(着用して)当然だ』と言われ、同僚に分けてもらいました」
と憤る。
菅義偉官房長官は2月21日の閣議後の会見で、新型コロナウイルスの感染予防で品薄が続くマスクについて、中国の生産再開や国内企業が24時間の生産体制を敷いたことで、例年の2倍以上の1億枚を供給していると述べた。3月からは月産6億枚の供給が可能となるよう、増産を働きかけていることも明かした。
「入手しづらいうえに、仕事で必要なモノなのに......」という女性販売員の憤りはわからなくもないが、大手百貨店も対応には苦慮しているようだ。
そこで、J-CASTニュース会社ウオッチ編集部は大手百貨店に、新型コロナウイルスの感染拡大後の店頭(売り場)のマスク着用について対応状況を、広報担当者に聞いてみた。
三越伊勢丹ホールディングスは、お客が多い首都圏店舗の「グランドフロア」と呼ばれる1階と地下食品売り場で、マスクの着用を義務付けている。他のフロアも、希望者には着用を認めている。
「1月28日に義務付けの方針を決定しましたが、備蓄しているマスクに限りがあるので、現状ではフロアを限定しています」
と、説明している。
Jフロント、売り場を制限せずにマスク着用を指示
高島屋は、大型店(東京・日本橋と新宿、横浜、京都、大阪)の免税カウンターと食品、化粧品売り場に限り、マスクの着用を徹底している。マスクの入手が困難な従業員などには支給して対応している。
「テナント店についてはその会社の判断になりますが、ほぼ着用している状況です。お客様から見ても、(マスクの着用は)安心できると思います」
と話す。
他の売り場も個人の健康状態や接客の仕方などに応じて、希望者の着用を認めている。
大丸や松坂屋を傘下に置くJフロントリテイリングは、当初は希望者への着用を認めていたが、1月下旬には店頭(売り場)の制限なしでマスクの着用を指示した。
「個人で用意したマスクを使っている人もいますが、入手できない社員については会社で支給しています」
と述べた。
一方、セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武は、現状マスクの着用を義務付けておらず、支給もない。ただ、希望者の着用は認めている。「販売員の判断に任せていますが、化粧品売り場などは、ほぼ着用しています」としている。