新型コロナウイルスの感染はどこまで広がるのでしょう......。2020年2月23日の天皇誕生日の一般参賀が中止になったり、3月1日の東京マラソンで一般参加者の出場が取りやめになったり、ほかにも多数の人が集まる各種イベントが続々と中止になっています。
国は手洗いやアルコール消毒、咳エチケットのほか、不要不急の集まりを控えるように呼びかけているけれど、有効性が証明された治療薬はまだありません。
一般企業では、IT系を中心にGMOインターネットグループ、ドワンゴ、クックパッドなど、在宅勤務を実施する企業も増えていますが、企業が感染症を理由に社員を出社させないという命令は有効なのでしょうか? 給料は保証されるのでしょうか? パートやアルバイト社員は仕事をしないのですから、給料ももらえませんよね......。
今回はこちらのご相談を、グラディアトル法律事務所の「闘う弁護士」、伊藤琢斗先生に聞きました。
新型コロナウイルスが理由の休業命令は「有効」だけど......
従業員の誰を出勤させるかは、使用者、つまり経営者に決定権限があります。出社させない命令(休業命令)については、原則有効です。これは、症状によって変わるものではありません。
労働基準法26条によれば、使用者側の責に帰すべき事由による休業の場合、すなわち経営者側の事情によって、労働者を休業させる場合には、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないとされています。これは、パートやアルバイトでも変わりません。
しかし、感染症に罹ったことを理由として休業させる場合については、その感染症の種類や程度など、さまざまな事情を考慮して、使用者側の事情による休業かどうかを判断することになるでしょう。
一つの参考として、厚生労働省の2009(平成21)年10月30日付通達では、労働者が新型インフルエンザに感染し、医師によって休業するよう指導されている場合には、休業命令を発しても使用者側の事情による休業ではなく、休業手当を支払う必要はないという旨の記載があります。
つまり、経営者が労働者に対して、60%の手当てを含め、給料を「支払う必要はない」というわけです。これは、感染した状況によって判断が変わることはないでしょう。
新型コロナウイルスでも、感染した旨を診断した医師から、数日間は他人と接触しないよう指示されるでしょう。その場合には、給与を支払うことなく、休業命令を出すことができるということになります。
万一、新型コロナウイルスに感染して休業命令を出された場合には、まず会社に休業手当が支払われるのか確認しましょう。法律上の義務とは別に、会社として休業手当を支払う方針であれば、休業手当が支給されることがあります。
一方で、会社が休業手当を支払わないと回答した場合、有給休暇を申請するなどで対応しなければ、休んでいる期間は給料が出ないことになってしまいます。