「この会議、必要なの」
「また会議中に眠りかけちゃった」
「会議なんてやってる暇ないのに......」
誰でも一度は感じたことがあるであろう、会議への不満。でもこれは、その会議のやり方がなっていないだけのことです。やりようによっては、社員一人ひとりの自主性が育まれ、組織が活性化する、そんな場に変えることができます。
「期待以上に部下が育つ高速会議」(沖本るり子著)かんき出版
やる気マンマンのモチベーションが急降下する時
ある会社の出来事です。その会社では、新人に仕事を覚えることを目的として、会議の議事録を書かせていました。ところが、上司の新人に対する評価は厳しいものでした。
「いまの若い奴は文章がなってない。メモをろくに取れないし議事録もひどいものだよ。あのレベルじゃクライアントを任せることはできないね」
沖本るり子さんは、こう聞き返したそうです。
「皆さまは議事録が書けると思うのですが、誰から教わったのですか。同じように教えてあげたらいいじゃないですか」
と......。
「いやいや、ちゃんと教えているはずなんだがね」
と、部長が答えます。
沖本さんは、このような現象を「伝えてるつもり病」だと解説します。このような会議では、参加者のモチベーションがどんどん下がっていきます。モチベーションの有無はパフォーマンスに影響を与えるので、維持することが望ましいはずですが、実際には簡単ではありません。
「ここで一つ、よくある会議の事例についてお話しましょう。ある会社の社長が営業マンのモチベーションが低いことを会議で指摘したと仮定します。いま、各営業部門の部長が対策について協議が行なわれています」
A部長 「社長もあのように言っていることだし、モチベーションを上げるための研修を導入してみてはいかがだろうか」
B部長 「反対です。経費削減の中で、研修を導入する余裕などありません。あなたの部門だけやればいいじゃないですか。営業マンを甘やかすのではなく、もっと厳しくすべきです」
A部長 「だったら、B部長は具体的になにをやれば良いと思っているのですか。アイデアがあるなら教えてください」
B部長 「いや。アイデアはいまから考えようと思いまして」
A部長 「アイデアもないならケチをつけるのはやめてください。不愉快です」
C部長 「A部長も、B部長もネガティブな意見ばかりでやり難いですね」
「A部長は、B部長に否定されて頭にきています。B部長は、なぜそこまで言われなければいけないのかと頭にきています。C部長はA部長とB部長に否定的な感情を抱いています。参加者が会議のルールを知らないことでこのような事態を引き起こしているのです。これは、発信する方法を知らないことによって引き起こされる残念なケースといえます」
沖本さんは、そう説明します。
会議をうまく進めて結論を導くために必要なこと
会議は「賛成」「反対」の立場で対立すると収集がつかなることがあります。多くの人が集まる機会ですから「賛成」「反対」ではなく、「妥協しない解決点」を見出だして、同時にデメリットを考える、効率のいい会議を目指さなくてはいけません。
しかし、職責の高い人に対して意見はしにくいものです。間違えると、会議にネガティブオーラを充満させて、建設的な討議を難しくします。
この点について、沖本さんは次のように答えています。
「デメリットは言いにくいものです。否定・批判は、された人も聞いている人も嫌な気分になります。そこで、誰も悪者にならないようデメリットだけを探す時間を設けるのです。もちろん自分が提案したアイデアにも同じようにデメリットを探します。また、デメリットは出しっぱなしで終わるのではなく事前に"策"を考えておきます。全員で考えれば多くの策も考え出せます」
そして、
「最初に会議のルールを決めてください。発表は、討議するテーマについて 1 回に"ひと言だけ"です。ひと言で、すぐ次の人が発言します。制限時間が来るまでずっとぐるぐる順番を回します。もし意見が思い浮かばなければ『パス』もありです。流れを止めないようにしましょう」
と言います。
会議の運用には相応の慣れが必要です。しかし、全員が参加するデメリット出しで、時間も区切られているのならネガティブオーラは払拭できそうです。会議はノウハウを知って正しく活用すれば、組織の問題解決や課題クリアに役立つだけでなく、個人の成長をも促すことができる場として活用することができるのです。(尾藤克之)