キャッシュレス決済の成長する余地(現金決済規模)、いわゆる「伸びしろ」が年間73兆円と推計されることが、日本クレジットカード協会(JCCA)の調査でわかった。2020年2月18日に発表した。
また、現金で決済する消費者のうち、「現金派」「キャッシュレス派」のいずれでもない「使い分け派」が4割を占めることもわかった。JCCAでは、この「使い分け派」をどのように「キャッシュレス派」に転化させていくかが、今後のキャッシュレス社会実現のための課題としている。
「現金派」を除いた現金決済額は年間41兆円
「キャッシュレス社会実現に向けた消費実態」調査によると、家計消費の決済金額の合計は193.2兆円で、このうち、ふだん現金で決済している「現金派」の決済金額規模は、年間73兆円だった=内訳は下図1のとおり。
つまり、キャッシュレス決済には73兆円分の「伸びしろ」があると推計できる。
決済シーンごとの現金決済とキャッシュレス決済のシェアをみると、「店舗での支払い」(117兆円)のうち現金決済が57%、キャッシュレス決済が43%、「定期的な支払い」(口座振替など。55.6兆円)のうち、現金が7%、キャッシュレスが93%、「EC」(20.6兆円)のうち、現金が7%、キャッシュレスが88%を占めていた(いずれも金額ベース)。またJCCAが独自に算出した、「店舗での支払い」や「定期的な支払い」「EC」の合計の家計消費調査からみたキャッシュレス決済の比率は推計で62%(120兆円)だった。
さらに、73兆円の現金決済を構成する消費者は、「現金派」「キャッシュレス派」のいずれでもない「使い分け派」が4割を占めたことがわかった。「現金派」を除く消費者層(主に「使い分け派」)による現金決済規模は年間41兆円で、JCCAはこれを「狭義の成長余地」としている。
なかでも、「店舗での支払い」におけるキャッシュレス決済の成長余地が37.9兆円と、大きな割合を占めている。
41兆円の9割(約38兆円)を占める「店舗での現金決済支払い」を、仮にキャッシュレス決済に転化することができれば、家計消費調査からみたキャッシュレス決済比率は62%から83%に達することになる。
なお調査は、調査サンプルの母集団のITリテラシーやキャッシュレス決済の利用状況に偏りが少ないように「訪問留置調査」を採用。JCCAは野村総合研究所の協力を得て、対象の1000世帯から2万1303件の家計消費支出明細データを収集のうえ、消費実態調査を実施した。
また、調査における「キャッシュレス決済」は、現金(紙幣・硬貨)以外の決済手段全般とし、クレジットカードや電子マネーのほか、バーコード決済、口座振替、銀行振込もキャッシュレス決済に含めている。