先人の失敗例の内容を知ることは、有用な転ばぬ先の杖になる。本書「世界『倒産』図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由」は、その「杖」の役割を託された一冊。
日本や欧米で、あるいは世界をまたにかけ、一時代を築きながらも失敗を犯して「倒産」に至った25社について、その経緯を詳しく調べ、それぞれから学ぶべきポイントを引き出している。業務の進め方や、あるいは生き方などについて、なにかしら教訓となることが得られるはずだ。
「世界『倒産』図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由」(荒木博行著) 日経BP
ポラロイド、コダック、トイザラス、そごう......
著者の荒木博行さんは大手商社勤務や、法人向けコンサルティング業務を経て、今は2つの会社の経営に携わる一方、経営大学院でマーケティングや経営戦略を教えている。ビジネススクールでは、実際の企業事例が題材になるのだが、一般的には、失敗例ではなく成功事例が圧倒的に多いという。それは、成功事例が概してハッピーなストーリーなので関係者が語りたがるため詳細が明らかで、学びや研究の対象として事欠くことがないからだ。
しかし、失敗事例はその逆。責任問題が絡み当事者はなかなか真相を語りたがらない。「だからこそ」と著者。「時として形になる失敗事例のケースはとても大きな気づきの機会をもたらし、私たちの行動を変えるヒントを与えてくれる」。このことが本書出版の大きな動機だ。ポラロイド、コダック、トイザラス、そごう、山一證券、北海道拓殖銀行...。収められている25社のうちには、近年、加速度的に進んだデジタル化、IT化の先々を見誤って倒産に至ったケースも少なくない。
著者は、執筆にあたってはインタビューなどは行わず、書籍などの公開情報のみを基に書き上げたという。