「悪手の中の悪手だ。得より損が絶対的に多い」
こうした動きに野党の保守側は冷ややかだ。中央日報(2020年2月12日付)「GSOMIA破棄論浮上に韓国保守『また総選挙用反日扇動か』」が、こう伝える。
「GSOMIA破棄論が青瓦台で再浮上し、野党は『選挙用ポピュリズム』と批判した。自由韓国党のパク・ヨンチャン報道官は2月12日、公式論評で『総選挙を控え文在寅政権が再び反日感情を持ち出した。ポピュリズムの被害はそのまま国民に返ってくる』と述べた」
パク報道官は、「国家安保の根幹を揺るがす懸念が大きいとして多くの国民が強く反対を叫んだだけでなく、日本の輸出規制の動きに特別な牽制役もできなかった記憶がまだ生き生きと残っている。それでもまたGSOMIAカードを持ち出したのは、総選挙での勝利に切羽詰まっているためだ」とこき下ろした。
「新しい保守党」のイ・ジョンチョル報道官もこの日論評で、「総選挙を控え反日扇動の誘惑を感じているならば本当に深刻だ。『竹槍歌』のような青瓦台の反日扇動は、国益の観点では決して望ましい方向ではない」と批判した。『竹槍歌』とは、竹槍をとって日本軍に反乱を起こした東学軍は2万人余りが命を失ったが、日本軍の戦死者は一人だけだったという故事にちなみ、玉砕の精神を高々と歌ったものである。
米国側も、唐突に出てきたGSOMIA破棄の動きに困惑している。米日韓の軍事同盟の要だからだ。中央日報(2020年2月13日付)の単独取材に応じたハリー・ハリス駐韓米国大使は、こう語っている。
「率直に、初めて聞く話だ。もう少し確認してみなければならないが、どのように進んでいくのか推移を見守りたい。米国は、GSOMIAは重要だという立場だ。新たな状況については今すぐコメントし難い」
ハリス大使はインタビューの前、米アカデミー賞授賞式でポン・ジュノ監督の映画「パラサイト 半地下の家族」が受賞イベントを続けているあいだ、職員と一緒に映画に登場した「チャパグリ」を食べ、機嫌よく祝賀ツイートを書き込んでいた。それだけに困惑の表情を隠さなかった。