広告最大手の電通グループは2020年2月12日、昨年1年間の業績予想を下方修正し、808億円の赤字になると発表した。電通が赤字に転落するのは2001年に上場して以来、初めてのことだ。
メディア界に巨大な影響力を持つといわれる電通の一大事だ。まさか「忖度」などあり得ないと思うが、主要新聞はどう報じただろうか――。
一方、インターネット上では、
「日本最大のブラック企業は解体すべし」
「マスコミ・広告業界を牛耳ってきたツケがきた」
と批判の声が殺到している。
トップの日経、2段の毎日・読売、ベタ記事の朝日・産経
電通の決算発表があった翌日の2月13日付の主要新聞朝刊(東京都内最終版)各紙を見ると、紙面での扱いの大きな差が出た。
「電通、一転最終赤字808億円 前期、のれん減損響く」
という4段ぶち抜きの見出しで、投資情報面のトップに扱ったのは、経済専門紙の日本経済新聞。さすがに2つもグラフを使って赤字転落の背景を、
「豪州で大口顧客を失い、中国では現地の広告会社との競争が激化、苦戦が続いている。また盛んに行ってきた海外企業のM&Aの評価損も計上する」
などと詳細に伝えている。
一方、一般紙はというと、どこも非常に地味な扱いだ。
「電通、初の営業赤字」
という、まったく同じ2段の見出しで、ともに経済面の下のほうに掲載したのは毎日新聞と読売新聞。朝日新聞と産経新聞は、経済面の情報ファイルコーナーの中で目立たないベタ記事。東京新聞に至っては、記事がなかった(ただし、オンライン版では共同通信配信の記事を掲載)。
「電通がなくなると、国民が困ることがあれば教えてください」
というわけで、日本経済新聞を除く主要新聞の報道ぶりには隔靴掻痒(かっかそうよう)の感が残ったが、インターネット上では電通に対する批判の声が高まっている。
多いのは「電通は解体して出直したほうがいい」という意見だ。
「そもそも広告『代理』店がここまで力を持つことが歪みきった仕組みです。一度解体して広告業界を再編したらいいです」
「近所のスーパーが閉店したら困るが、電通がなくなると僕たち一般国民が困ることがあれば教えてください。どうしても思いつかなくて、夜も眠れません」
赤字化の原因についても、さまざまな意見が飛び交った。特に多かったのは、「ブラックな企業体質」と、電通のビジネスモデルが現在のインターネットを中心とした商品・情報流通の流れに合わなくなっているという指摘だ。
「電通の赤字はTVの終焉の前兆と見ている。今やコンテンツなんて多彩。1日中TV見なくてもネット系で情報はなんでも入る。スポンサーもYouTubeにシフトした方が堅い。要は下らない芸能人が増え過ぎたのと、放送コードの強化で番組が面白くなくなった。天下の電通とて視聴者をいつまでも甘く見ていると潰れるぞ」
「電通がテレビCMを抑えている以上、刃向うテレビ局など存在しない。ゴールデンタイムにCM出したい企業は、テレビ放映時間枠確保を電通に口利きさせている。テレビ局側も、美味しいCMをもらうために電通に尻尾を振り、夜昼なく接待している。しかし、広告塔としてのテレビ業界が斜陽業界になりつつある現在、これからの電通はダメだ。YouTube広告だとgoogleの許可さえ通ればいいだけだし、今やCMなんて安い動画ソフトでそんなに知識なくても簡単に作れる。広告代理店がなくても十分世間に広告できる」
「まあ、テレビ局もサブスクリプションなど、CMに頼らないビジネスモデルを目指しているし、ネット動画広告時代で参入障壁も下がっているから、今までの電通のやり方ではどんどん苦しくなっていくのだろうね」
電通に限らず、既存のオールドメディアの崩壊の兆しだとする意見も多かった。
「今、テレビの宣伝は多すぎる。番組を見ているのではなく宣伝を見ているようだ。パソコンのYouTubeのほうがオンデマンドで面白い。宣伝もカットできるし無駄な時間がない。もう、テレビを見る気がしなくなった」
電通と付き合いがあるという人々から、電通社員の体質を問題視する意見も多かった。
「30年ぐらい前、私が大学生の時は、電通社員はモテモテで花形職業だった。今の時代の激変ぶりを痛感する。銀行も不人気業種になりつつありますね」
「私が学生の頃は、男女ともいいとこの子が多くて、『コネ通』と呼ばれていたね。親から仕事をもらって回すから、普通の子だった友人は自分が場違いだと言っていたな」 「地方では知名度がなくて、私はずっと電力会社かと思っていました」
最後に、そんな電通社員に対して、こんなエールの声が――。
「電通、終わりました。才能のある人は早く逃げて~」
(福田和郎)