元朝日新聞女性記者の「韓国映画への熱いエール」
一方、朝鮮日報(2020年2月11日付)「『パラサイト』ポスター『生脚』の謎、解けた」は、逆に「パラサイト」の受賞に関する日本メディアの意地悪な反応をこう批判する。
「海外のネットユーザーたちは『#Parasweep』というハッシュタグを付けてのアカデミー賞受賞を祝った。映画の英題『Parasite』と『(賞を)さらう』という意味の英語『Sweep』の合成語だ。海外のネットユーザーたちはアカデミー賞が『ついに白人映画祭を脱出した』と喜んだ」
「しかし、日本最大のポータルサイト・ヤフージャパンでは『パラサイト のアカデミー作品賞受賞に納得?』というアンケート調査を実施し、物議をかもしている。しかし、日本のネットユーザーの多くは『失礼なアンケートだ』『十分に納得に値する』という反応を見せている」
確かにヤフージャパンのアンケートを見ると、2020年2月12日午前11時現在、合計投票数1万360人、「納得できる」68.9%、「納得できない」31.1%で、圧倒的に多くに人が受賞に賛成だった。コメント欄を見ても日本人ユーザーから、
「情けない質問だ。恥を知れ! 韓国映画に追いつけ、追い越せという気概がないのか」
「もうやめようよ。何とかして韓国の揚げ足を取ろうとするのは」
などの声が相次いでいる。
中央日報は、日本人映画ライターによる「パラサイト」称賛の寄稿文を掲載した。筆者の成川彩(なりかわ・あや)さんは元朝日新聞記者だ。10年ほど文化を中心に取材したあと、韓国映画に惹かれ、映画を勉強し直すために新聞社を辞めて韓国に渡った。2020年2月11日付の「コラム:元朝日新聞記者が見た『パラサイト』アカデミー作品賞受賞の意味」は、日本と韓国の映画を比較しつつ韓国映画のパワーを、こう伝えている。
「アジア映画の中で世界的にまず先に注目を浴びたのは日本映画だった。アカデミー賞では1950年代の黒澤明監督の『羅生門』をはじめ、3作品が相次いで受賞した。今の国際映画賞(外国語映画賞)に該当する名誉賞だった。2003年に宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(長編アニメーション賞)、2009年には滝田洋二郎監督の『おくりびと』(外国語映画賞)なども受賞したが、作品賞はなかった」
「『パラサイト』がカンヌ国際映画祭で受賞したパルム・ドール賞は、日本映画では1954年衣笠貞之助監督の『地獄門』から2018年是枝裕和監督の『万引き家族』まで5回も受賞した。それに比べると昨年の『パラサイト』まで、韓国映画に受賞作がなかったというのはとても遅い感がある」
成川さんが、新聞社を辞めて「映画を学びに韓国に来た」と言うと、「なぜ韓国に? 日本のほうが映画産業は発達しているのに」と聞く韓国人が多かった。しかし、韓国の映画祭を頻繁に訪れる日本映画関係者は、韓国で映画を学ぶ成川さんを羨んだ。釜山映画祭常連の是枝監督は「韓国の映画人はとにかく若い。活気にあふれる業界の雰囲気は最近の日本では見られないものだ」と話したという。
そして、成川さんはこう結んでいる。
「韓国では2000年代に入り、映画産業を国家的に支援しながら大学などでも映画を学ぶ環境が作られていった。『パラサイト』だけ見ても、監督の演出力や脚本の面白さだけでなく、セットで撮影したとは信じられないほど精巧なCG技術など、その一つひとつの技術力は世界最高水準だ」
「『パラサイト』のアカデミー作品賞受賞は、これまで韓国映画の多くの努力と情熱がそれを可能にしたという意味で、受賞に値する。韓国映画ファンとしても、同じアジア人としても、心から祝う気持ちだ!リスペクト!」
韓国映画界には、4冠を取るべくして取る底力があったというのだ。