機密メソッドを一般向けに改良
「仕事ができる人、少し先を読むことができる人は、知らず知らずのうちに、未来予測のテクニックの一部を使って、思考・分析を繰り返しているのである」と著者は指摘。このコンサルタントの例は、プロセスがシンプル化されたものだが、作業に当たるうえで、こうした技法を承知しているか、いないかでは、その仕事の内容はおのずと変わってこよう。
「『問いの再設定」のほかに、大きな外部環境に着目してから徐々に内部環境を分析していく「アウトサイド・イン思考」、過去から現在までのトレンドを把握し、特定事象の発生をもたらした影響要因をみて「潮流」を捉える「クロノロジー分析」などを紹介、濃厚な解説が施される。いずれも安全保障の最前線で磨かれた機密メソッドを一般向けに改良したもので「自分の周辺の未来、あるいは、自分が属する会社や業界の今後などを、可能なかぎりに正確に予測する技術を指南する本」と著者は本書を位置付けている。
著者の上田篤盛さんは、もと防衛省分析官。防衛大学校卒業後の1984年に陸上自衛隊に入隊。87年陸自調査学校の語学課程入校以降、情報関係任務に従事した。1992年から95年までバングラデシュ日本大使館で警備官として勤務。危機管理や邦人対策を担当した。帰国後は、調査学校教官を経て、15年以上にわたり防衛省情報分析官および自衛隊情報教官を務めた。主として国家安全保障分野における情報分析の実務や教育を担当。2015年に定年退官し軍事アナリストとして活動している。
「未来予測入門 元防衛省情報分析官が編み出した技法」
上田篤盛著
講談社
税別900円