「『問い』の再設定」
ここでは、顧客のメーカーから、現在売れている他社製品の特性を調べ、その特徴を盛り込んだ新商品(類似商品)の企画を命じられた経営コンサルタントの例で具体的なプロセスが示される。
コンサルタントはこの調査を進めるうちに、ライバル社の売れ筋商品が何らかの事情でクライアント企業には製造が不可能であることが分かる。
コンサルタントはそのことを報告する義務があるが、報告することによってクライアントが失望することは間違いない。コンサルタントは、クライアントの立場になって「クライアントが達成しなければならないことは何か」を考えてみることにする。これが「問い」の再設定の試みだ。
コンサルタントは、クライアントとの打ち合わせのなかで、クライアントにとって新製品の開発が絶対に必要な課題とはなっていなかったことを思い出す。依頼では、ライバル社の製品に食われ落ち込んでいる現有製品の売り上げが回復するなら多大なコストをかけてまで新商品の開発に及ぶ必要はないということだった。
コンサルタントは、ライバル社の商品を参考にした新商品開発は不可能という報告をする一方、「類似商品を作れるか?」という「問い」を「既存商品の売り上げを回復するための方策はないか?」という別の「問い」に再設定。その回答として、新たなPR策や販路開拓の方法をリストアップした別の報告書を添付した。クライアントは、この別報告書に感じ入り、さらに詳しいレポートの依頼を出した――。