日本銀行は、イングランド銀行や欧州中央銀行などの6つの中央銀行と国際決済銀行と共に、デジタル通貨の発行や利用例についての共同研究に乗り出すことを、2020年1月21日に発表しました。
国際決済銀行(BIS)の調査結果によると、世界中の中央銀行がデジタル通貨の発行を検証していることが明らかになっています。
ちなみに、ブロックチェーンを基礎とした中央銀行のデジタル通貨はCentral Bank Digital Currency 、通称「CBDC」と呼ばれています。
そこで今回は、中央銀行のデジタル通貨の発行と、私たちの生活に与える影響について解説していきます。
中央銀行のデジタル通貨「CBDC」構想って何だ!?
さっそくですが、中央銀行のデジタル通貨「CBDC」とは、なんでしょう?
日銀のホームページに、「CBDC」に関する定義が書かれていました。
(1)デジタル化されていること
(2)日本円などの法定通貨建てであること
(3)中央銀行の債務として発行されること
日銀が発行する日本銀行券、いわゆるお札は、24時間365日誰もが使える決済手段として提供されています。要はこれを、suicaやpaypayのようにデジタル化しようというのです。
suicaなどの電子マネーは、日本円と価値が連動しているものの、日本円ではなく企業が提供する決済手段です。法定通貨をデジタル化するということは、現物のお札がデジタルに置き換わるということ。株券が電子化になったことと似ているといえます。
それで、どうなるのか――。まずはデジタル通貨になるメリットです。
お札がデジタル通貨になれば、
(1)持ち運びが容易
(2)紛失リスクが低下
(3)マネーロンダリング対策
などと、いいことがたくさんあります。
デジタル通貨にもハッキングリスクは存在する
メリットを、具体的にみていきましょう。
(1)持ち運びが容易
すでに当たり前になっていますが、モノではなくデジタル化されているため、持ち運ぶ必要はありません。日本にもようやくキャッシュレス化の波が押し寄せていますが、お店でsuicaが使えるかどうかではなく、デジタルな日本円が使えるのかどうか、という話になるでしょう。
(2)紛失リスクが低下
平和な日本では、財布を落としてしまっても高い確率で戻ってきます。しかし、お金を落としてしまってはどうでしょう? 仮に、もし1万円の番号○○は自分が持っていたと主張しても、見つかる可能性は限りなくゼロとなります。
しかし、デジタル化されていれば、そのリスクは低下します。どのようなカタチで保有するかはわかりませんが、電子マネーのように端末を紛失しても保有データが残っていれば、紛失リスクは低く抑えられます。
(3)マネーロンダリング対策
現金は保有者がわかりませんので、銀行口座などに入れない限り、誰も知らないところで動きます。しかし、電子化されていれば、お金の流れを監視することができます。
本人確認を徹底するなどで反社会的集団がデジタルな日本円を保有することができないようにすれば、マネーロンダリング対策となりそうです。
もちろん、リスクも考えられます。
セキュリティ対策をきちんとしなければ、誰がどれだけのお金を持っているか、わかってしまう可能性があります。匿名性のない仮想通貨では、仮想通貨アドレスを追い続けることで保有者を特定できることが可能です。
また、仮想通貨の大きなリスクであるハッキングリスクは、デジタル通貨にも存在します。この問題が解決されない限り、普及は難しいでしょう。
お金のデジタル化がもたらす「未来」
そもそも、世界の中央銀行が「デジタル通貨」化へ舵を切ったのは、フェイスブックの仮想通貨プロジェクトである「Libra(リブラ)」が影響しているようです。リブラの発表に対し、各国は猛反対しました。
すると、中国がリブラに似たデジタル通貨を発行することを視野にブロックチェーンに力を入れると発表。こういった動きによって、デジタル化への議論や研究が加速したものと考えられます。
2020年1月23日の時点で、BISが調査した66の中央銀行のうち、80%もの国が「CBDC」に取り組んでおり、すでに40%近くが実験や概念実証の段階に進んでいたそうです。
お金がデジタル化することは、紙幣を印刷する必要がないので自然環境にもやさしく、膨大なお金を金庫で保管する場所も、強盗から守る警備員も必要なく、とてもエコだと言えそうです。(ひろぴー)