まず「真の強み」を知ること
人との対話のなかで「真の強み」を見出すことがある。
大手家電メーカーで、クレーム対応のスペシャリストとして鳴らした30代後半の男性。クレーム対応コンサルタントとして独立したものの、すでに業界で活躍している同業者との差別化に悩んでいた。経験と実績をアピールするため「クレーム対応の教科書」を出版しようと準備するものの、出版社からは色よい返事が得られない。
数年間こうした苦労を重ねたのち、著者との会話のなかで、クレーム対応を心折れずに長く続けられているのは、対応スキルもさることながら、独自に開発したストレスマネジメントの方法があるからだということが分かってきた。「本当の『強み』」に近づいた。出版のテーマを「ストレスとうまく付き合う生活習慣」に変え企画書を作ったところ、これに出版社は好反応。コトはうまく運んで本が出版された。男性は現在、ストレスマネジメントの専門家として企業研修や講演の依頼が増加。それにつれて、本来やりたかったクレーム対応の専門家として認められるようになり、両分野の専門家として多忙な日々を送っているという。
ドラッカーは『創造する経営者』のなかで、次のようなことを述べているという。「企業が売っていると考えるものを顧客が買っていることは稀である」。「真の強み」を発見するには、ひとりよがりにならず、周囲が巻き込むことが大切。本書のタイトルには「ひとり起業」とあるが、事業を行うのは一人でも、なんでもかんでも一人ではできないことは全編を通じて共通している。
「ドラッカー理論で成功する 『ひとり起業』の強化書」
天田幸宏著、藤屋伸二監修
日本実業出版社
税別1500円