夫婦で築き上げた30年間が凝縮された、人間味あふれる古書店(Vol.8 「虔十書林」)

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   すずらん通りには、個性的な古書店が積み木のように並ぶ。虔十書林(けんじゅうしょりん)もその一つで、黄色い看板に描かれた猫のイラストがトレードマークだ。

虔十書林は、店主の多田一久さんと奥様の道子さんがやさしく迎え入れてくれる
虔十書林は、店主の多田一久さんと奥様の道子さんがやさしく迎え入れてくれる

   細長い店内に足を踏み入れると、両側の高い棚に映画のパンフレットとチラシ、詩集、幻想文学などが並ぶ。専門分野はなんだろう。目的がなく入っても、手に取ってじっくりと眺めたくなる品物が散りばめられているようで、つい店を何往復もしてしまう。

   店主の多田一久さんと、奥様の道子さんが気さくに取材を引き受けてくれた。

町の古本屋さんから神保町へ

   もともとは板橋区にお店を構えていたという。当時の品揃えは、特定の古書を求めるお客さんに向けたものではなく、実用書など生活に根付いたものがほとんどであった。11年間、板橋で営業したのち、同業者の勧めで2001年に神田の街に移転した。

「本の街で営業するには、何か専門分野を持たないと!と考え、今の映画・文学・児童書を主とした形になっています」

   何度か移転をし、すずらん通りにやって来たのは2019年の3月。「元々この場所でやっていた方に『ここ使ってくれない?』と言われて条件も合ったのでそのまま越して来ました。なにかと促されるままにこれまでやって来たんです」と、一久さんはニンマリと笑う。

   移り変わる神保町の様子について、うかがった。

「海外から来られるお客さんがかなり増えたように思います。邦画のポスターなど、丁寧に保存された状態の良さに感激してくれますね」

と、道子さんも作業をしながら語る。

   一久さんは

「やっぱり『ゴジラ』や小津安二郎、黒澤明などが人気ですね。詳しく勉強している方も多くて、日本人のお客さんより棚の奥までしっかりと探しているかも。仕入れは出会いなので、人気商品を取り揃えるように努力しています」

と話す。

「海外からのお客さんも増えてきた」
「海外からのお客さんも増えてきた」
なかざわ とも
なかざわ とも
イラストレーター
2016年3月学習院大学文学部卒。セツモードセミナーを経て桑沢デザイン研究所に入学、18年3月卒業。趣味は、宝塚歌劇団、落語、深夜ラジオ、旅行。学生時代より神保町に惹かれ、現在フリーペーパー「おさんぽ神保町」の表紙や本文のイラストを手掛けている。1994年、東京都生まれ。
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