終焉が長引くとSARSどころではない世界経済に大衝撃!
三菱UFJ銀行のレポート「経済マンスリー 2020年1月(中国)~新型肺炎の長期化リスク等には要注意」(2020年2月1日付)も、終焉が長期化した場合、世界経済に与えるインパクトは計り知れないと警告する。
その理由として、SARSの場合との大きな違いをこう説明する。
「SARSの事例を確認すると、中国の実質小売売上高は、患者数が急拡大した2003年5月に前年比+4.9%と伸びが急減速したものの、患者数が一服した同年6月には同+9.6%まで回復した。感染の中心地である香港でも似た動きがみられ、同年 4 月に前年比 マイナス13.4%となったものの、同年 7 月には前年比プラスとなっている。(新型コロナウイルスが)仮に短期間で終息するのであれば、一時的に統計が大きく振れることはあっても、中国経済に急減速をもたらす事態は回避できるものと思われる」
ところが、今回の事態はSARSと大きく違い、長期化する可能性が高い。それは、香港で起こったSARSと異なり、武漢という中国本土の交通の要衝で起こったことと、米中貿易摩擦が続いているからだ。
「2003年頃と異なり、今の中国経済は緩やかな減速期にあり、米中摩擦も抱えていることから、外的ショックへの耐性は以前よりも低下している。加えて、今回は交通の要衝である武漢を含む広範な地域を事実上封鎖するという非常事態になっている。封鎖の長期化や対象地域拡大が必要な状況に陥れば、物流の停滞や生産停止、消費抑制に繋がり、中国経済への下押し圧力が格段に増すことになる。世界経済へのインパクトという点でも前回とは異なっている」
「中国の一人当たりGDPを確認すると、2018年は2003年の約7倍に拡大しており、少なからぬ産業でグローバル・サプライチェーンの枢要な一翼を担っていることから影響力が増大している。生産活動の長期停滞が世界経済全体への重石になる可能性にも注意が必要となろう」