権力者が富裕層と癒着「富を貪っている」構造がある
さらに、「経済的不平等はジェンダーの不平等によってもつくられている」とし、男女の経済格差にも言及。世界全体で労働年齢の女性の42%(男性は6%)が介護などの責任を負わされて、仕事に就けずにいる。また、介護や育児などの無報酬や正当に評価されていない労働の総時間は125億時間にのぼり、年間で少なくとも10兆8000億ドルに相当すると、推計している。
こうした点においてジェンダーの不平等があり、女性には低賃金で不安定な雇用や、家事・育児・介護など賃金不払いあるいは異常に低賃金の労働が不釣り合いに押し付けられているため、「政府が介護などの分野に投資し、女性に適切な賃金が支払われるしくみを作るべきだ」と提言している。
この報告書では、「各国政府は1%ではなく99%の国民の利益になる経済をつくらなければならない」と訴え、(1)富裕層・高額所得者・大企業への課税強化と税金逃れ対策(2)低賃金や無権利となっている介護などの労働者の保護③ジェンダーの不平等の是正―― などを求めている。
ちなみに、オックスファムの2018年時点の報告書では、世界の富裕層上位26人が、世界の人口の約半数となる約38億人と同じ額の資産を保有しており、この約38億人の資産合計は対前年比で11%減ったのに対し、富裕層1900人の資産合計は12%増加しているとしている。2019年時点と比べれば、格差は一段と拡大しているわけだ。
日本を含め、多くの国がそうであるように、国家や政権、権力者が富裕層と癒着し、富を貪っている構造があり、それが格差を縮小・解消するための法規制などを妨げている要因となっている。こうした状況を改善しない限り、格差の縮小は難しいのではないだろうか。(鷲尾香一)