バブル世代以降は過半数が生涯ヒラ社員
◆ やる気のない中高年
そして、もう一つ看過できない日本型雇用の問題が「中高年従業員のモチベーション低下問題」である。
「年功序列」といっても、在籍していれば青天井に昇給昇格していけるというものでもない。低成長が続く中で、各社ともポストを減らしているから、課長 → 部長 → 事業部長と出世できる人材などほんのひと握り。バブル世代以降の世代は、すでに過半数が生涯ヒラ社員というデータもある。
となると、出世レースに白黒がつく40代以降はどうなるか――。それ以上、上がり目がなくなるから、ほどほどに手を抜いて省エネモード化するしかない。
特に新しいことはなにもせず、ルーチンワークだけをこなす。新しい企画提案にはとりあえず反対から入る。まず「やらなくていい理由」を探す...... etc
誰でもリアルで思い当たる人がいるはずだ。この低モチベーション問題は、さまざまな調査にも如実にあらわれている。
【参考リンク】日本経済新聞「『熱意ある社員』6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査」(2017年5月26日付)
フォローしておくと、これは彼らが悪いのではなく、日本型雇用のルールがそういう人たちを生み出してしまっているのが原因である。だから、年功ではなく職務で評価するようにルールを変えましょうと、経団連は呼びかけているわけだ。
年功を努力で延ばすことは無理だが、担当できる職務に応じて賃金が払われるのであれば、スキルアップでより高給のポジションに就くチャンスは(20代から60代まで)すべての従業員に公平に与えられることになる。
要するに、年功という物差しから職務という物差しに変えることで、組織内にチャンスと希望をもう一度再生しようというのが、今回の見直しの狙いである。
おそらく、すべての労組がトヨタ労組のように「ものわかりが良い」対応はしないだろう。こうした見直しの動きは、ごく一部にとどまるのかもしれない。
ただ、一つだけ確実に言えるのは、時代に合ったルールへのアップデートが行えない労使には、終身雇用どころか10年先の未来すら存在しないということだ。(城繁幸)