今回はお正月のドラマ「教場」(フジテレビ系)から、お届けします!
主演は、またまた木村拓哉さん。警察学校の教官、風間公親役でした。「教場」のキムタクは、すさまじい迫力でした。寡黙で必要な言葉しか話さず、鋭い義眼の奥ですべてを見透かしている。とにかく、怖くて厳しい。一見すると、悪役のよう。だけど誰よりも警察組織とその一員になる生徒を思うヒーローでした。
「教場」は、働くうえでの「優しさ」と「厳しさ」を、考えさせられました。
組織における「優しさ」とは何か......
あなたは毎日、どのように働いていますか?
「教場」を見た方は、お正月で緩んだ気持ちが、ピリッと引き締まったのではないでしょうか。
「優しさ」とは、
穏やかで好ましい。
おとなしくて好感が持てる。
思いやりがあって、親切。心が温かい。
上品で美しい。優美だ。
身も痩せるような思い出はつらい。
他人や世の中に対して引け目を感じる。恥ずかしい。
心遣いをして控えめである。慎ましやかである。
(節度を持って振る舞うさまが)殊勝である。健気である。
と、たくさんの意味を持つ言葉です。
人との関係で使われる言葉なので、本人が優しさのつもりでしていることも、受け手の捉え方によっては優しくも厳しくも映るものです。
ですが、組織では「組織に貢献する行動なのか」という軸で、優しさを定義できるのではないでしょうか。さらに、どんな時間軸を持っているかで、優しさの定義が変わってきます。
組織は継続し、未来に価値を積み上げていかなければならないので、「今のため」の優しさではなく「未来のため」の優しさが組織における、あるべき優しさだとドラマは教えてくれました。
組織の見えない未来を見やすくする
では、「優しさ」とは何か――。
警察官として、警察学校を卒業した後のほうが厳しい日々が待っている。最後に風間公親教官が、生徒の一人、宮坂定(工藤阿須加)にかけた言葉「死ぬなよ」のひと言に、組織の未来と個人の未来を見据えた「優しさ」が集約されていました。
風間には一番遠い未来を見据えた長期的視点があるから、生徒たちにこれでもかと厳しく接していたのです。
短期的な視点を持った優しさは、受け手にとっても優しいものの、警察組織の未来においては生徒の未来を危険に晒すことになったでしょう。
風間教官は、「あの時は厳しい上司でイヤだったけど、今思うと感謝しかない」と思われることでしょう。ドラマでは、最上級に厳しく狂気さえ感じましたが、プロの世界(警察官という仕事)はそれだけ厳しいのだと捉えることもできました。
簡単に「パワハラ上司」という言葉で括ってはいけないのでは......。そう思ったのです。
「働き方改革」についても、考えさせられました。
現代は、
「長時間労働はやめよう!」
「得意なことをしよう」
「苦手なことはしなくていい」
というような風潮もありますが、つらさや厳しさをグッと堪える時期も必要なようです。試練を乗り越えてこそ、長期的視点が養われ、人も組織も成長するのではないでしょうか。
働き方改革という言葉をやすきに流れるために使うのは、働くことで得られる成長を考えると本末転倒。ついラクをしたくなる自分を叱咤激励してくれるドラマでした。
働くうえでは、自分の所属する組織の未来、一人ひとりの社員の未来を考えると、長期的視点の優しさ、つまりは厳しさが必要なんですね。
自分が上に立つ時は、嫌われたくないという気持ちに打ち勝ち、厳しい指導が組織と個々のメンバーのためになる。自分が下にいる場合は、組織の未来は見えにくいですが、自分の立場をわきまえると、厳しさの中にある優しさに気づけるのではないでしょうか。
ちなみに、実際の警察学校では「篩にかける」という方針ではなく、全員合格するために指導しているそうです。それにしても、警察官の方々は多くの努力と苦労のうえに日々の業務があるんですね。命をかけたお仕事、尊敬しかないです。(入澤あきこ)
◆ フジテレビ開局60周年特別企画「教場」 ◆
フジテレビ系。2020年1月4、5日21時から、2夜連続で放映。原作は長岡弘樹著の同名小説。脚本は君塚良一。主演は木村拓哉。舞台は警察学校。「君には、警察学校をやめてもらう」と口癖のように生徒たちをにらむ異色の教官、風間公親(木村拓哉)。公式サイトのキャッチコピー「ここで生き残った者だけが、警察官になれる。」にあるように、極度の緊張感の中で過ごす中で、風間教官に導かれていく生徒の姿を描いた。視聴率は1月4日が15.3%、5日が15.0%(ビデオリサーチ調べ)。