元号が「令和」にかわってすぐに、2024年発行の新一万円札の顔に「渋沢栄一」が決りました。第一国立銀行など約500もの企業の創設に関与し「資本主義の父」とも言われています。
それにしても、いま、なぜ渋沢栄一なのでしょうか――。渋沢栄一の玄孫、渋澤健さんが解説します。
まんが 超訳「論語と算盤」(渋澤健著)光文社
武士道で「信用」を得る
もし、逆境に立たされたサラリーマンが、渋沢栄一著「論語と算盤」を読んだら、どうなるのか?
ビジネスパーソンに読み継がれるベストセラー「論語と算盤」の設定が、現代に置き換えられた内容です。ボリュームは、7割が漫画、3割が解説です。現代の平均的ビジネスパーソンは1か月1冊の本を読まないと言われていますが、この内容なら楽しんで読むことができるでしょう。
「武士道は食わねど高楊枝」という言葉があるように、「武士=清貧」のイメージがあります。経済活動と結びつかない人もいると思いますが、渋沢栄一は「武士道はすなわち実業道」と言っているのです。要は、武士道はビジネスに通じるという考えです。
武士道は生き方なので、理解が難しいかもしれません。これを、渋澤健さんは次のように解説します。
「武士道は、近世以降、武士階級の間で発達した道徳、倫理や価値基準が体系化された思想です。実際に、新渡戸稲造が書いた『武士道』は世界のベストセラーになりました。武士道が確立した江戸時代、朱子学を中心とする儒教の影響を受け、武士が支配階級であるためにふさわしい立派な精神や行動を求められるようになったことが根底にあります」
「武士道の真髄といえば、孔子が『金と地位は誰でもほしいが正しい方法で得なければいけない。貧乏なのは誰でも嫌だが、それは怠慢などのなるべくしてなる正しい方法があってなるのだ』と看破します。時代によって解釈が異なりますが、栄一はその真髄を廉直(れんちょく)、敢為(かんい)、礼譲(れいじょう)などの、美徳をすべてあわせたものとしています。そして、これが信用であり、ビジネスにも不可欠と説いているのです」