理不尽なバッシングを受ける「朝鮮族」の人々
ところで、韓国には「中国同胞」と呼ばれる人々がいる。もともと中国各地に住んでいた、同じ民族の「朝鮮族」の人たちだ。今回の新型肺炎パニックで、その「中国同胞」たちが理不尽なバッシングを受けている現状を、ハンギョレ(2020年1月29日付)が「食堂の前には『中国人出入禁止』、SNSには『朝鮮族の家政婦、辞めてもらおうか』」という見出しで伝えている。
「50代の中国同胞Aさんは、最近経験したことを打ち明けた。Aさんの息子が1月4日に交通事故に遭い、足に大怪我をして病院に入院した。しかし、完全に治っていない状態なのに急いで退院しなければならなかった。中国同胞に向けられるヘイト感情が怖かったのだ。『もともと私たちに対する差別が激しいのに、病院にいて誰かが新型肺炎にかかったら、また"朝鮮族"だからとあれこれ言われるのは目に見えている。SARS(重症急性呼吸器症候群)の時も根も葉もないうわさが流れたが、今回も同じです』。Aさんはため息をつきながら言った」
ハンギョレが続ける。
「ネットのあるコミュニティーにも『武漢肺炎が心配だから、朝鮮族の家政婦にもう来ないでと言おうか』という書き込みが掲載された。他のネットユーザーらも『朝鮮族の家政婦たちは中国に帰国して症状が出ても、届け出るような人たちでもないし』『朝鮮族の食堂の従業員たちが唾を飛ばしていると考えたら、食堂にも行けない』と話した」
「(中国同胞が多い)大林洞の中国同胞たちもこのような世論をよく知っていた。中国同胞のBさんは『悔しいが、何も話したくない』と言った。大林中央市場商人会のキム・ヨナ総務は『中国同胞たちの衛生観念は私たちと同じ。もともと中国同胞に対してもっていたヘイト感情が、新型肺炎をきっかけにもっとひどくなっている』と話した」
労働組合の間でもとんでもない動きが起こっている。ハンギョレ(2020年1月29日付)がこう伝える。
「出前配達プラットフォームで働く配達サービス労働者労組は『中国人の密集地域への配達禁止』を要求した後、偏見差別的な要求だという批判を浴びて謝罪した。労組は使用者側に、『中国人の密集地域(有名観光地、居住地域、訪問地域など)への配達業務を禁止するか、または危険手当を支給せよ』と要求したのだった。さすがに中国人に対する偏見だという批判が起こると、労組は『マイノリティーに対するヘイトスピーチについて、重大な責任感を感じ、傷ついた方々にお詫びを申し上げる』と明らかにした」
こんななか、韓国人の中国人に対する暴行事件も起きている。中央日報(2020年1月29日)「『中国に帰れ』韓国の繁華街で韓国人・中国人一行が暴行騒ぎ」がこう伝える。
「ソウル市の繁華街、弘大入口駅近くの路上で1月29日、韓国人3人と中国人4人が暴行容疑で警察の取り調べを受けた。麻浦警察署によると、双方の言い争いは互いが歩行中に相手の肩にぶつかりながら始まった。韓国人一行が『中国に帰れ』などの発言をしたことから暴行騒ぎに発展した」