「竹」の振動版を採用したスピーカー
チヨダ工業の早瀬一明社長は、
「廃棄される木材、木質の再利用、放置竹林の活用などの森林資源の有効活用や、プラスチックごみの問題解決に向けて、この技術を世に知ってもらいたい」
と言う。
そのための製品として出したのが、竹の振動板を採用したスピーカー「Vuillaume homage(ビヨームオマージュ)」だ。さまざまな木質素材でスピーカーコーンを試した結果、竹素材が一番いい音が出るとわかり、音マニアもうならせるようなスピーカーに仕上がった。一昨年(2018年)10月から市販化している。
その音のスゴさは直径8センチメートルの振動板でありながら、50~100人ぐらいが入ることのできる喫茶店や会議室などで、十分にその力を発揮することができる優れものである。
この竹のスピーカーコーンは、木質流動成形の技術でしかできないものであり、従来のスピーカーコーンに使用されている紙と同じような薄さが実現できる。また、竹の特徴でもある「高剛性・高内部損失」を最大限に生かしたことで、バイオリンなどの弦を引くリアルな音まで再生を可能にした。
そのでき上がりは、3年ほど前のプロトタイプを試聴した音マニアが、その場で「30万円で譲ってくれ」と申し出たというほど。現在、プロトタイプから幾度となく改良を重ねて、市販化したスピーカーは、音に詳しくない筆者でも音質の違いがわかるほどのでき栄えに仕上がっている。